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「あれが折原さんかな……」
駅前の壁によりかかってスマホをいじる背の高い男性は、メールに添付されていた男性に似ていた。
長めのロングジャケットを羽織り、黒のスキニーパンツを着た折原さんらしき人は、スタイルが抜群すぎて、あの人の隣に私は並べるのだろうかと少し戸惑う。
風に乗って遊ぶパステルイエローのスカートに控えめにフリルのついた白いブラウス。下の方で緩めに巻かれたミディアムの髪の毛はゴールドの髪留めで1束まとめてある。
少しキツめの私の顔には似合わない系統だったが、不思議とそんな記憶はないのにデートの日にはいつもこれを着ていたような気がして手にとらずにはいられなかった。
駅前の階段を降りて、折原さん(仮)の元へ駆け寄る。
「折原さん、ですか……？」
「A、さん？」
初めてまともに見た折原さんの綺麗な切れ長の目と視線があって、脳の奥でまるで電流が流れたように衝撃が走った。
身体からなにかが零れ落ちていくような、必死でつなぎとめないと消えてしまうような、意味もなく涙が溢れそうな、変な感覚だ。
さらりと届いたその声に、指先がピクリと反応した。
「センラ、って呼んでください」
「わたしのことも、名前で」
グロスを塗った自分の唇から流れ出たのは考えついてもいなかった言葉。
分からない。名前で呼んでほしかった。
会ったばかりだけれど、絡む視線を外すことが出来なくて、苗字で呼ぶなんて他人行儀なことはしてほしくなくて、ぎゅっと、その手を握りたくなって。
分からないけれど。
不思議な感情が脳内を支配する。
「A、行こか？」
「せ、センラ………」
「んふふ、そんな緊張せんでもええよ？センラがエスコートしますから」
センラの口から発せられた私の名前は、何度も何度も呼んだことがあるようにつまづいたり引っかかったりしていなかったけれど、私の口から出てきたのはぎこちなく震えた声。
言葉の一つ一つが柔らかくて暖かくて心にゆるりとした隙間を作ってくれて、落ち着いて。
何年もずっと一緒に過ごしてきたかのような安心感を覚えた。
「えっえっと、今日は、どうぞよろしくお願いします……！！」
「うん、よろしくね、A」
にっこりと笑ったセンラの顔に、私の表情も綻んだ。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2020年1月13日 22時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
ね む(プロフ) - ふと思い出してまた読みに帰ってきました朝から号泣ですありがとうございます本当に本当にりどうさんと居たら一番好きな小説が決められなくなるよもう全部大好き、朝からちょっぴり切ないけど幸せな気分です (2019年10月10日 7時) (レス) id: 90904ccaf0 (このIDを非表示/違反報告)
こと - めっちゃ泣きました！！ありがとうございます！とてもいいはなしでした！ (2019年8月9日 2時) (レス) id: 7dcbe0da66 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 涙腺が崩壊しております。こんなに感動するお話は、初めてです。これからも頑張ってください！ (2019年8月7日 11時) (レス) id: 472af6cc69 (このIDを非表示/違反報告)
Kizuha(プロフ) - 自分の不注意でネタバレすみませんでした…コメントは削除しました。作者様、Aさん、ご迷惑おかけしました… (2019年7月20日 8時) (レス) id: f4d4759676 (このIDを非表示/違反報告)
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