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“えへへ、もう涙すら出なくなっちゃった”
明るく言うつもりだったのであろうそのセリフは、震えて聞き難い声だった。
それでも鈴の音を転がしたように響くAの声は全く不快な気持ちにならない。
「てことはさ、私たちって一年に１回しか会えてないってことでしょ？」
「そうやね」
「なんか織姫と彦星っぽくてかっこいいじゃん！！彦星くんは織姫ちゃんがどこにいても必ず見つけだしてくれるんでしょ？」
にっこりと見上げたAの笑顔は一年前と、なんら変わりなくて。
その笑顔を滲ませまいと噛み締める唇には歯の後がくっきりと残ってしまっている。
なあ、Aは気づいてへんのかもしれへんけどさ。
今Aが着てる服、それセンラがプレゼントしたやつやねん。
初めてデートした日にAが「これかわいい！」って言うてたからこっそり買って、あとで渡したやつ。
今日色んなとこに出かけてるいつかにさりげなく聞いてみたその服を着ている理由。
“なんかこの服に呼ばれてる気がした！”
やって、そう元気にA答えたよな。
俺慌ててトイレに駆け込んだもん。涙腺って、こういうとき邪魔なんやね。
俺が今日来てるこの服も、Aが一年前の今日に着てきてって言うてた服。
あの時ちゃんと着てきてたんやで。Aに見て欲しかったのに。お前は見らずにセンラの届かへんとこに行ってしもうてて。
あぁ、もう、12時になってしまう。
「あ、あれ…………なんかすごい、透けてきた…………？」
「……おわかれ、なん？」
「………だね」
悲しそうに俯いて頬をかきながら微笑んだA。
12時に消えてしまうなんて、そんなシンデレラみたいな、おとぎ話の一場面のような光景。
晴れた夜空にかかる天の川と静かに漂う海と君。
──────なんて、綺麗なんだろう。
「七夕の日は会いきてな。俺ら、織姫と彦星なんやろ？」
「七夕じゃなくても会いに来るもん……っ！」
「いつでも待ってるで。七夕限定の彼女なんて嫌やもんな。」
「うううせんらぁ…………！！」
お別れが迫る今になきじゃくるA。
そんな姿が愛おしくて愛おしくて思わず抱きしめる。
触れることは出来ないが、重なることならできる。
震える君の背中に手を回して、赤ちゃんをあやすように手のひらでリズムを刻んだ。
「だいすきだいすきだいすき……！！」
「うん、せんらも」
「ずっとずっとすきい…………」
「分かってる」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2020年1月13日 22時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
ね む(プロフ) - ふと思い出してまた読みに帰ってきました朝から号泣ですありがとうございます本当に本当にりどうさんと居たら一番好きな小説が決められなくなるよもう全部大好き、朝からちょっぴり切ないけど幸せな気分です (2019年10月10日 7時) (レス) id: 90904ccaf0 (このIDを非表示/違反報告)
こと - めっちゃ泣きました！！ありがとうございます！とてもいいはなしでした！ (2019年8月9日 2時) (レス) id: 7dcbe0da66 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 涙腺が崩壊しております。こんなに感動するお話は、初めてです。これからも頑張ってください！ (2019年8月7日 11時) (レス) id: 472af6cc69 (このIDを非表示/違反報告)
Kizuha(プロフ) - 自分の不注意でネタバレすみませんでした…コメントは削除しました。作者様、Aさん、ご迷惑おかけしました… (2019年7月20日 8時) (レス) id: f4d4759676 (このIDを非表示/違反報告)
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