解除したい心のパスワード

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手が腰の位置まできたところで、顎をしゃくった。


「潤んー」


右手人指しを唇にあて、右足を一歩踏み出すと、すかさず手首を反した。


右手の甲を口元にあて、口を拭う仕草をした後で、その手を顎の位置まで持ち上げる。


そして人指しを、クイックイックイッ、と曲げた。


まるで、俺を求めてみろ、と挑発するように。


「熱くー」


踏み込んでいた足を引くと、その足を軸に身体を反転させる。


肩越しに視線を送り、足は開いたままで、心なしお尻を突き出した。


背を弓のようにしならせる。


それからすぐさま身を反転させ、正面へと向き直った。


藤ヶ谷の熱い視線に、心が震えるのを感じた。


「俺だー」


ステップを踏みながら、右に、左に、と腕を振る。


サビの部分は特に弄ることはしない。


本来の振り付けでひたすらに藤ヶ谷を煽る。


『愛して欲しい』『見つめて欲しい』


歌詞と心が、切ないまでに共鳴する。


腕を左右に開き、次いで自らを抱きしめるようにギュッと腕を閉じた。


右足に重心を移動し、胸に添えた両の手は真下に下ろす。


けれどすぐさま引き戻し、右腕を放るように振った。


未だに動きを見せない藤ヶ谷が、もどかしい。


サビが終わったところで、言葉が口を衝いて出る。



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