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『またね、北山さん』


あの男の声が蘇り、テーブルにサングラスを置いた。


ソファに背をもたれ、虚空を見つめる。


「またね、……かぁ」


低音でどこか甘さを含んだ響き。


それが、耳にこびりついたように離れてくれない。


あの男は、一体なにものだったのだろうか?


あの日から1ヶ月が経った。


未だに『ガヤ』とは再会を果たしていない。


単なる気まぐれだったのかな。


ただの戯れ言と割り切って忘れてしまえばいいものの、そう出来ないのは『ガヤ』に少なからずとも魅力を感じたからだろう。


『もう一度会いたい』


そう思わせるような、不思議な男だった。


ふぅ、と息を吐くと、騒がしい声がどこからか聞こえてきた。


ガチャッ、と扉が開く。


「おっはよー!…って、うわっ、もうミツいんじゃん!」


珍しい、と大げさに驚く二階堂に、「うっせーよ!」と悪態を吐いた。


「本当だ。珍しい」


そう言いながら、二階堂の後ろから顔を出したのは、千賀だった。


二階堂と千賀。


俺はこの2人とグループを組み、歌手活動をしている、所謂『芸能人』であった。


最初『ガヤ』も俺と同じで業界の人間なのだと思っていた。


局内で出会ったのだし、なにより綺麗な容姿をしていたから。




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作者名:ニコたん | 作成日時:2017年2月28日 14時

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