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身を反転させて向かい合うと、藤ヶ谷さんの首に腕を回した。


すかさず自分の方へと引く。


唇が触れるか触れないかの至近距離まで、互いの顔が近づく。


「北山さん!?」


驚愕の表情を浮かべる藤ヶ谷さんに、悪戯な笑みを向けた。


「際どいショットも必要でしょ?」


俺の言葉に、藤ヶ谷さんは目を見瞠った。


けれど、次の瞬間には表情を消した。


「へぇー、随分と大胆ですね」


藤ヶ谷さんの声色がどこか怒気を含んでいるように感じたのは、気のせいだろうか。


「普段からこういうこと、してるんですか?」


背中に手が添えられ、ぐっと引き寄せられる。


「いいえ。滅多にこういうことはしません」


「なら、今度からやめて下さい。俺こういうのは好きじゃないんで」


冷笑を浮かべ、藤ヶ谷さんが俺を引き剥がす。


「今日はもう終わりにしましょう」





走行音だけが響く車内には、重苦しい空気に満ちていた。


助手席から、藤ヶ谷さんの様子をチラリと窺う。


「あの、藤ヶ谷さん。なんか怒ってます?」


横目でちらっと視線を向けた藤ヶ谷さんは、涼しげな顔で言う。


「いいえ。怒ってませんよ」


怒ってないと言うわりには、声色が冷ややかだ。


「怒ってんじゃん」


拗ねたように唇を尖らせれば、ため息を返された。



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作者名:ニコたん | 作成日時:2017年2月28日 14時

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