Toru.05 ページ10
.
電話は知らない番号からだった。
だけどなんとなく分かっていた。
たぶん、彼女だと。
だからおかしいと思った。
俺の携帯のディスプレイを見て一瞬固まったマッキーを、おかしいと思った。
マッキーの動揺はほんの一瞬、少し目を見開いて息をのんだ、それだけだ。
でも高校時代、俺だってだてに主将やってたわけじゃないんだ、分かっちゃうよ、そのくらいはさ。
なんでマッキーがかたまるの？
固まったマッキーに視線をぶつけてから、俺は席を立って電話をとった。
「…及川くん？」
「そうですけど…園美さんですか？」
「そうそう、ごめんね、ビックリしたわよね。部員から番号勝手に聞いちゃった」
「全然大丈夫です！それよりどうしたんですか？」
「あのね…急で悪いんだけど、部にもう一人マネージャーが欲しいのよ。私ももうすぐ4年で就活が始まっちゃうでしょ？だから、ね」
「あー…俺の女友達から見つけてこいと」
「そういうこと！こっちでも探してみるけど、及川くんのルートが確実かなって。だから一応誰かに声かけてみてくれる？」
「分かりました、いいですよ。」
「ごめんなさいね、こんなことで電話して。でも私これからしばらく部活休むことになるから、言っとかなくちゃーってね」
「え、園美さん休むんですか！？なんで！？」
「ふふ、それは教えなーい。あ、でも大丈夫、部長には言ってあるから。じゃあ、切るわね、おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
ﾋﾟｯ、と携帯を切ってからマッキーを再び見る。
だけどそれは呆気なく遮られて、代わりに岩ちゃんが俺の方を見ずに言った。
「おまえ、それはやめとけよ」
「…え？」
「その人に恋したって叶わねぇよ」
「な、…んでそんなこと、岩ちゃんが、」
「………及川」
「なに！？」
「ちゃんと、がんばれよ」
「はぁ！？なんなのどっちなの！？」
「がんばって、その人にフラれてこい」
「岩ちゃん！！！」
言いたいことだけ言って、がたり、と席を立った岩ちゃんを、マッキーが追いかける。
待ってよ、なんなのさ、岩ちゃんが、なんで、そんなこと。
マッキーといい岩ちゃんといい、園美さんの何を、二人は知ってるわけ？？
モヤモヤしてイライラして、たまらなくなる。
「俺は、及川の味方だから」
謎のエールを残し、まっつんも席を立つ。
一人取り残された俺は、ぽつんと、わけも分からず座っていた。
ビールのおかわりを頼んで、一気に飲み干してから、おあいそ！と叫んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
radio-co.(プロフ) - 励ましのコメントありがとうございます！文庫化なんて畏れ多いです汗 言葉を大事にしすぎて一言一言が重苦しくなるのが欠点でして……。もう少しラフに書けるといいなー書きたいなーと思っています笑 これからも是非応援宜しくお願いします(／＼)＼(^o^)／ (2017年12月29日 16時) (
レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - どっどっどうもありがとうございます！(#^.^#) 文章力とストーリーの両方を誉めて頂けるなんて、これほど嬉しいことはありません！あやせさんのこの言葉を励みに更新頑張っていきますので、これからも温かく見守ってくださいね。 (2017年11月29日 17時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
あやせ(プロフ) - あっあっあの、好きです(語彙力) 引き込まれるストーリーと綺麗で丁寧な文章表現、本当にすごいなと思いました。これからも応援させていただきます…！！ 更新楽しみにしてます〜(*^^*) (2017年11月22日 16時) (レス) id: a236a20ef8 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - ユラさん» 大変な誉め言葉をありがとうございます！汗 更新が不定期で申し訳ありません。ここから皆の恋愛が動いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いしますね。 (2017年10月2日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ(プロフ) - 凄く大人っぽいのに読みやすくて、あっという間に夢中でした！やばいこれ超良作じゃん！とか言って一人で騒いでます笑。及川くん達のこれからがとても気になるので、更新、お願いします！！ (2017年9月26日 0時) (レス) id: 9a45404af6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：phobia | 作成日時：2017年2月18日 10時
