唇に滲むブルー 【HQ!!】

Toru.03 ページ6

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「あ、園美さん」


パチパチと瞬きを数回した後、徹くんじゃない、とこちらへ向かってくる彼女。

「珍しいのね、あなたが声をかけてくるなんて」

一緒に食べる？と、月見うどんの乗ったトレーを空いている席の方へ動かす。

「あ、はい」

やっぱり綺麗だな、と見惚れてしまう。
そして上品。
そのうえオレが彼女と別れたという噂は、確実に彼女にも伝わっているはずなのにそこに触れてこない辺り、彼女はそんじょそこらの女の子たちとは違う。
無粋さも色目も下心もない、そんな美しさに惹かれるんだな。






「徹くんはもっとガッツリ食べるのかと思ってたわ。男の人にしては少食なのね」

うどんを持ち上げる箸、それを掴む細い指先に無意識に目がいってしまう。
頭のてっぺんから爪先まで、どこからどこまでも綺麗なんだなこの人。
ちょっと不公平じゃないかな、と思わざるを得ないほどだ。
弱点とかあるのかな？
なんか完璧すぎるっていうか、神聖すぎるっていうか＿＿＿高嶺の花、ってこういうこと。


「普段はもっと食べますよ」

「あら、体調でも悪いの？」

「んー…そういうわけじゃ、」

「ダメよ、ちゃんと食べないと。大事な体なんだから。アスリートは体が資本、粗末に扱うと痛い目みるわよ」

「…そうですね」

「はい、あげる」

ひょいと俺の皿の上にのせられた海老天。


「園美さ、」

「明日からは、もっとちゃんとしたものしっかりガッツリ食べること！いい？マネージャー命令よ！」

ニカッと笑うその笑顔が、あまりにあどけなくて、でも綺麗で、激しく心の内側が揺さぶられているのが分かった。
＿＿ああ、本当に、この人は。


「分かりました、明日からはカツ丼定食２つ頼みます！」

「それは食べ過ぎ！太られるのも困る！」

あはは、と笑い合える今がこんなにも幸せだ。
なんだか泣けてきちゃうくらい。
でも我慢。


「明日からも、たまに一緒に食べませんか？」

「ん？いいわよ」


でも私は徹くんファンの子みたいに、手作り弁当なんて作ってこないから期待しないことね、と茶化される。
そんなところもいいな、と思う。


「はははっ」

ねぇ、A。
俺頑張ってみるよ。
園美さんと上手くいくかどうか、頑張ってみる。
君が背中を押してくれた、その愛と誠意に精一杯……応えるから。


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