唇に滲むブルー 【HQ!!】

Toru.07 ページ17

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Aが部活に助っ人としてやってきて1ヶ月ほど経った今日。
今日も園美さんが部活に来られないって言うからAに仕事を頼んでおいたんだけど、急遽園美さんが顔出しに来た。

Aは普段通りの表情で挨拶して、ちょこっと一緒に仕事してたんだけど、こっちはもうハラハラしまくりで。

ふたりがどうこうする訳はないって分かってるんだけど、きっとAへの罪悪感と申し訳なさだったのかな、あれは。

もうAの表情は気になるわ、久々の園美さんに嬉しいわ、男どもの浮き足立ってるのがものすごく伝わってきて腹立つわ、そんで部活に集中できないわで散々だったよ！


終わったあとソッコーふたりのとこ行って、Aに送るから片付けして着替えてきてと伝え、軽く園美さんと会話したあと、園美さんは部長と何やら話があるようでそちらに行き、俺はAを送るため着替えに走った。

更衣室へ向かう途中に水場があるんだけど、小走りでいつものように通りすぎようとしたんだ。
そしたらそこから男と女の声がしてさ。

普段なら特段気にすることなんてないんだけど、その声＿＿透き通った、品のある声に聞き覚えがあった。



「あ、大丈夫ですよ、あと片しておくので」

「この量じゃ大変でしょ、手伝うよ」


何度か同じようなやり取りをしたあと、女の方がおれてじゃあお願いします、と。

ガチャガチャと音がし始めたので、そろそろ離れようとしたとき、


「ちょ、きゃっ！」

女が叫んだ。
そしてガタンガタンと大きなものがぶつかったり倒れたりする音が聞こえた。

「やめて、やめて下さ、…！」

「ずっと好きだったんだ……でも、及川と＿」









「先輩、何してるんですか、部長が呼んでましたよ」

「お、及川……＿ああ、…うん、今行く」

「……」


離される手、訴えてくる眼、不安だったと怖かったと。
小さく震える体を、助けてあげることはできても抱きしめてやることはできない。

それがどれだけもどかしく、悲しく、辛いことか、今日初めて知ったよ。

「A、……っ！」

「徹…」


そんな、目をして、
そんな、目をしているのに
どうして俺は、彼女を抱き締めてやれない？

「ごめん…」

「なんで徹が、あやまるの」

「沢山、ごめん……っ」

駆け寄ってきた彼女が俺の背中に触れる。
優しく、そっと、手のひらの温もりが伝わってくる。

「ありがとう、徹」




何よりも、こんなに優しい君を隣で守る権利を手放した、愚かな俺で、ごめん。

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