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「じゃあね」
「また明日」
いつも一緒に下校している幼なじみに駅前で別れを告げて、自転車を漕ぎ進めた。
「……?」
その道中で、スーパーマーケットの自転車置き場の自転車が、端から端まで無惨に倒されているのを見た。
その列の一番端っこで、腰の曲がったおばあちゃんが「あちゃー」と言いたげな顔をして杖をついていた。
(自転車倒しちゃったのか)
きっと故意ではないはず。
もしあれを1から立てていくとすれば、あのおばあちゃんたったひとりでは相当大変だろう。
あまり迷いなく、そのおばあちゃんの元まで寄って、自転車を降りると、「直すの手伝います」と申し出た。
「あら、いいのかい?」
「もちろんです」
「助かるねぇ、じゃあお願いします」
一つ一つ、ゆっくりと、丁寧に直していく。焦ればまたドミノ倒しになる可能性もある。
やっているうちにスーパーマーケットで買い物をしてたらしき奥様方も、協力してくれた。
五分ほどで、全ての自転車を立て直すことができた。
「ありがとうねお姉ちゃん。ほら、御褒美」
おばあちゃんが肩にかけていたバッグから、大きなお菓子袋を出した。
恐らくおせんべいの詰まったお菓子袋だ。
「えっ……いいんですか?」
いいんですか、とか言ってしまったことに後悔した。
おせんべい好きな私にとってとても嬉しいことを言われたためにそう反応したが、倒れた自転車を直したためだけにこんなものを貰えるなんて、なんだか逆に申し訳なくなる。
「いいのよぉ、せっかく手伝ってくれたんだもの。ばあさんひとりじゃどうしようもできなかったからねぇ。本当は孫にあげるつもりだったけど、お姉ちゃんにあげる」
いや、ますます受け取りづらい。
孫にあげるはずだった、って。
「ほら」
ずいっと突き出されたおせんべいを数秒ほど見つめて、私は「ありがとうございます」と、深々と礼をした。
よくよく考えれば断る理由も見つからなかったし、これで良かったのだろう。
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かなこ - 面白いです!忙しいとは思いますがこれからも更新頑張ってください!応援してます (2017年1月14日 10時) (レス) id: 44840db7e6 (このIDを非表示/違反報告)
みゆのん(プロフ) - すごい面白いです!もし何ですが私が、作った作品も読んでください! (2017年1月12日 22時) (レス) id: a82c72c54a (このIDを非表示/違反報告)
夢見沙也加(プロフ) - 涼河 最愛さん» ありがとうございます。そう言っていただけると受験生にも関わらずますます調子に乗って更新してしまえそうです。応援よろしくお願いします(´∀`) (2017年1月11日 7時) (レス) id: c8739959ef (このIDを非表示/違反報告)
涼河 最愛(プロフ) - すごく面白いです!!文章がとても素敵だな、と思いました。更新楽しみにしてます! (2017年1月10日 22時) (レス) id: 3dc9ed19e6 (このIDを非表示/違反報告)
夢見沙也加(プロフ) - ののさん» ありがとうございます。こんなただの妄想小説に反応していただいたこと、感謝致します(´∀`) (2017年1月9日 7時) (レス) id: c8739959ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢見 沙也加 | 作成日時:2017年1月6日 18時