家族みたいなもん。2 (ページ9)

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アレルギー（翔）9 ページ9

このまま一人だったら、オーダーしてみたものの食べれそうにないこのうどんをそのまま返却する予定だったが、まーが隣に来た以上、少しは食べなくちゃ、という念に駆られてやっと箸を持ち、手元で弄ぶ。

「・・・今日の日替わりランチの中にさ、エビ、入ってたじゃん・・・？サラダに。」

一口目のカレーをスプーンにすくいながらも、なお心配そうに「ん？・・うん、あったね」とまーが言葉を返す。

「・・・なんか甲殻類見た瞬間にダメなのな・・・急にすっげぇ気分悪くなっちゃって・・・うどんだったらいけっかなって思ったけど食べれそうにねぇや・・・なっさけな・・・」

少しでも食べなきゃと思ったばかりなのに、ついつい本音が漏れてしまう。

「・・・どうしても消えねぇんだよ・・変な感覚がさ・・」

今まで経験したことのないような、謎の感覚。ブラックホールのようだ。

それはやっぱり、俺がチョイスして調理したもので翔さんを危険な目に合わせてしまった、っていう事実から基づく感覚で。

怖かったのは俺だけじゃないって分かっているのに、恐怖のループにはまって抜け出せずにいる。

翔さんが倒れた夜、ICUで和からもらった言葉を信じていたいし力尽きてる場合じゃないのに・・・。

俯いている俺の背中にふわりと優しい手の感触。

「大丈夫。」

まーの一言と共に背中の手が上下にさすられる。

また、ICUでもみんなにこうやって励まされたっけ、なんて思い返す。

そんな俺の思考を見透かしたように。

「焦んなくていいよ。トラウマになっても仕方ないって。おかしいことじゃないよ。・・辛いね。でも午前中もしっかり外来こなしたんでしょ？頑張ったね。偉いじゃん。」

「・・ん。」

まーなりに一生懸命、言葉を選んで俺を励まそうとしているのが伝わってきてじわり、と心が温かくなる。

「ゆっくりゆっくり。ゆっくりだよ、松潤。」

おまえは俺の母さんか。そして俺はその腕の中で泣きべそかいてる小学生か。

なーんて一瞬、心の中で突っ込みながら、嬉しくて、温かすぎて、悔しいほどに泣けてくる。

なにがゆっくりなのか、明確な主語はないけれど、だからこそ不思議と胸が熱くなった。

「・・・ね？あとは翔ちゃんの生命力を、俺らが誰よりも強く信じてあげればいいんじゃねーの？」

自分で言った言葉にうん、そうだ、なんて呟いてるまーが可愛くて。

胸のムカムカしていた重りみたいなものが少し消化されていく感覚。

まーが言ってることは正しい。