PARACAGE 4th【ars】 (ページ15)

今日:1 hit、昨日:22 hit、合計:1,689,999 hit

120.営業と社交辞令。ページ15

「ここのギミスタ、初めて来たけど良い感じだね！」
「ありがとうございます！」

ペコーっと頭を下げたら「ホントに店員さんだ」って笑われた。

「あ、このタオルとか新作なんです！いかがですか？」

畳み直す為にちょうど手に持ってた、黒地にゴールドの大きめな星が1つ刺繍されてるタオルを広げて見せる。

「うわ！俺、営業されてる」
「人聞きの悪い！接客ですよ？」
「でもそれ、可愛いね」
「こんなのもありますよ！」

さっき畳んだ、花柄のタオルを広げたら「さすがにそれは使えないよー」って笑ってる。
...可愛い...。
大丈夫だよ！雅紀くんなら、女子力満点の花柄タオルだってオシャレアイテムになっちゃうよ！

「あ、そうだ。Aちゃんって今日、早上がりだよね？」
「え...何で知ってるの？」
「だって家を出るのが俺より早かったから」

きっと、うちの住人達なら私の出勤時間で早番か遅番かみんな分かってると思う。
分かってると思うんだけど、雅紀くんがそれに気付いてくれてるのはやっぱり嬉しい。
心の中で小さな私が小躍りしてる。

「仕事の後、何か予定ある？」
「特には...」
「じゃあさ、ご飯行かない？」
「え...」
「ご飯」
「えぇっ！？」

私の声が大きかったのか、近くに居たお客様がこっちを見た。
すぐに「失礼しました」と頭を下げる。

「こないださ、この近くに出来る肉バル行こって約束したでしょ？」
「肉バル...あぁ！」
「さっき見に行ったらオープンしてたからさ」

前に、私が読んでた雑誌を後ろから覗き見られた時そんな話をした。
...社交辞令だと思ってたのに...。

「あれ、約束だったの...？」
「え？違うの？俺は約束したつもりでいたんだけど...」

ヤベ、勘違いしてたのか...って、雅紀くんはちょっと気まずそうな顔をした。

「行きましょ！」
「え？良いの？」
「うん、約束でした！」
「あ、やっぱり約束してた？」

今度は安心した顔。

私が社交辞令だと思ってた約束は、雅紀くんの中では実行するつもりのある約束だったんだ。
嬉しすぎて、小躍りどころかブレイクダンス始めてる。心の中の小さな私。

「Aちゃん、18時までだっけ」
「うん」
「じゃ俺、外で待ってるね」
「...うん」
「また後で！」
「.....うん」

雅紀くんがヒラヒラと手を振って店を出て行く。
後ろ姿まで男前って何なの...。

ハァ...と何だか分からない息を吐き出してくるりと後ろを向くと

「どーゆー事！？」

アカリが顔を真っ赤にしてた。