PARACAGE 4th【ars】 (ページ11)

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116.納戸。ページ11

そう言えば、前に雅紀くんは言ってた。
庭でかき氷パーティーする事もあるんだって。

「シロップ去年全部使い切ったから、色々買って来たよー！」

ぶどう、メロン...って雅紀くんが1本ずつシロップを袋から出してテーブルに並べていく。
そこにニノくんも持ってたいちごシロップを置いた。

「あ、でもそんなに氷あるかな...」

翔さんが言うと、雅紀くんが「大丈夫！」ってピースサイン。

「氷も買って来てるから！」

そしてもう片方の袋から、ブロックアイスを出してニッコリ。

「ニゴも食べるぅ？何味が良いかなぁ」

智くんはもうノリノリみたいで、ニゴを抱っこしてテーブルに並んでるシロップを見てる。

「じゃ俺、パーティーセット取ってくる！」
「パーティーセット？」

私が訊くと、雅紀くんは「納戸に色々遊べるモノが置いてあんの」って教えてくれた。

「Aも一緒に取りに行っといでよ」

ニノくんがこっちを見ずに言う。

「納戸の中、入った事無いでしょ。何があんのか見とけば？」
「あー...」

そんな必要あるかしら...って思ったけど、それはニノくんの気遣いだってのも分かる。
どうしようかなって思って雅紀くんを見たら「行こ」って言ってくれたから、ついて行く事にした。

1階の廊下の端っこ。
お風呂場の隣に納戸はある。

雅紀くんが扉を開けて入って電気を点けた。
裸電球の小さな灯り。

「えっと、どこに置いたっけなー？」

雅紀くんが、荷物をゴソゴソしてる。

置いてあるのはスノーボードとか、釣竿とか。
誰の物かは分からないけど、キャリーケースもいくつか。

「Aちゃんも部屋に置けない荷物あったら、ここに持っておいでよ」
「雅紀くんも置いてるんですか？」
「うん、その板とこのキャリーは俺の」
「スノーボードするんですね」

まぁ、しない訳が無いか。
スポーツ好きそうだし。

「Aちゃんもするの？」
「んー...一回挑戦したんだけど、こけまくってそれからは...」
「そっかー！楽しいのに、勿体無いなぁ」
「楽しいって思う前に挫けちゃいました」

そう言って笑うと、雅紀くんも笑ってこっちに来た。

「じゃ、俺が『楽しいコト』に変えたげよっか」

薄暗い納戸。
彼は肩が触れる距離。

「教えたげる」
「え？」
「手取り足取り！」
「.....」
「約束ね？」

まだ夏にもなってないのに。

冬の約束なんて、雅紀くんはきっと忘れちゃうのに。
嬉しいなんて思ったら...

きっと辛くなるだけなのに。