PARACAGE 2nd【ars】 (ページ20)

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55.妄想を超える。ページ20

「えっ！？」

何か、こんなシチュエーションで撮影されてる雅紀くんの写真は見た事がある。
ほらあれ。デート企画の一場面。
『彼氏にアーンっておねだりされちゃった！』みたいな一文が添えられてたはず。

それを見て、咲くんって実際もこんな事するのかな...いや、しないでしょ...でもするのかも...なんて妄想してたのに。
妄想しか出来ない存在だったのに、何これ。

私が「いやいやいや...」って笑いながら(きっと超苦笑いだ)フォークを渡そうと手を伸ばすと、結局その手を掴まれて雅紀くんはそのままワッフルを自分の口に入れた。

「ん、おいし」
「......」

モグモグして、コーヒーを飲もうとマグを持ち空っぽになってる事に気付いたのか「！」って顔。
どうしようって感じでキッチンの方を見てる。

「あ...飲みます？」

まだコーヒーが残ってる私のマグを指差すと、彼は何の躊躇いも無くそれを取り一口飲んだ。

「このマグ久し振りー」

フフっと笑って、私に返してくれる。
...どうしようか。とりあえずマグの向きを変えてはいけない。シメシメ...とか思って間接キスなんか、しちゃいけないよ！私！

「前に潤ちゃんもワッフルあっためてくれたんだけどさー」
「はい」
「ウィンナーとスクランブルエッグが一緒のお皿に乗って来たの」
「えっ！？」

何その女子力！
オシャレなカフェの朝ご飯じゃないか！
ってゆーか朝ご飯なんて言えない、モーニングでも無い、ブレックファーストだ！

「潤ちゃんって料理が趣味だからね」

映画鑑賞と料理が趣味なのか、潤くん。
あの見た目で。何か、漫画みたい。

チョコレートの掛かったワッフルを食べる。
食べながら私も今度は、ご飯っぽくしてみようって思った。

雅紀くんは「あー...けだるいー...」とか言いながら片腕は顔の下、片腕は伸ばしてテーブルに突っ伏してる。

「雅紀くん」
「なぁに？」
「もうひとつ質問良いですか？」
「フフッ、答えられる事なら」
「...どうして芸名を？」
「あー...咲？」
「はい」

そのままのポーズで、雅紀くんが喋る。

「読者モデルしてたとは言っても、所詮素人だったからさ」

頷きながら、話しを聞く。

「撮影で『雅紀くん、良いよ！』とか『相葉くん、もっとセクシーに！』って言われると恥ずかしくて全然上手く表情もポーズもつけらんなくって」
「そんな感じになっちゃうんですか？」
「なっちゃったんですよー、俺は」

フフ、って雅紀くんが静かに笑う。