PARACAGE【ars】 (ページ13)

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13.木目の天井。ページ13

丼に残ったお出汁を飲み干して、潤くんが「ごちそうさまでした」と合掌。

彼がそのままチラっと私を見たから、何となく「お粗末様でした」と頭を下げたらクスっと笑われた。

やっと表情が変わった...！
ほんのちょーっと口角上がっただけだけど。

「さてと...俺、先に風呂入って良い？」

食べ終わった食器を運びながら、リビングで寛いでる三人に向かって潤くんが言う。

「どーぞー」

智くんが返事した後に、「風呂...」ってニノくんが呟いた。

「ねぇねぇ、翔ちゃん。Aも同じ風呂使うの？」
「風呂はひとつだからそうなるんだけど...Aさん、大丈夫ですか...？」

部屋に戻ろうと立ち上がった私に、翔さんが訊いて来る。
別に潔癖症でも無いし、気になるならシャワーで済ませたら良いし。

「はい、大丈夫です！私、部屋に戻って少し片付けて来ます」

私はそう言って、一人ダイニングを出て階段を上った。

色とりどりのドアの前を通って一番奥の部屋に入ると、フゥゥ...と無意識に息が漏れた。
やっぱり緊張してたんだな、って気付く。

家具はこっちの家の広さも分かんないし、どうせ引っ越すなら部屋に合わせて新調したいなぁなんて言ってたらゲンさんが処分しとくって言ってくれたからまだ何も無い。
ベッドだけのガランとした部屋の真ん中にペタンと座る。

「...私、ここで暮らすのか...」

天井を見上げると、木目模様。
ジーっと見てると人の顔に見えて来るから、すぐに見るのやめた。

ってゆーか、全員オトコだったんだけど。
五人中、四人がオトコってどうなの。

せめて最後の一人は女の子だと信じたい。

「さて、と...」

とりあえずの荷物が入ってるキャリーを開けて、洗面用具やメイクポーチを取り出す。
そして、服と服の間に大切に入れてた写真立ても一緒に出す。

アクリルのシンプルなそれに入ってる写真を眺めると、胸がギュウ...っとなって頬が緩むのはいつもの事だ。

私は昔から芸能人やアイドルに全く興味の無い人間で。
それよりも、服だったりメイクだったり雑貨だったり、旅行だったり食事だったり、そっちにお金をかけたい！って思ってて。

そんな私が数年前、雷に打たれた。

仕事に行く途中、通り掛かった本屋。
その日に出る雑誌のポスターが貼ってあった。

モノクロのポスターの中、微笑んでるのか睨んでるのか、どちらともとれる表情を見せてたその人から目が離せなくなった。

足が、動かなかった。