桃色の指先と翡翠の憂鬱 7

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施設の子どものように慕ってくれる佐久間。

笑顔を見て遠い記憶を思い出した。色素の薄い肌。

僕に屈託なく笑う笑顔。佐久間は僕の大好きな妹に似ている。

そして、僕に似て人を読める佐久間。天才的なダンススキル。

僕は佐久間の味方についた。


佐久間と僕と阿部先生。

少しずつ距離が縮まってきた。

佐久間は阿部先生の心を動かすことに成功した。
でも、阿部先生の心の扉は開けない。

佐久間の苦悩は日毎に大きくなって行く。

まだ、お前は阿部先生の心を読めないんだね。

少しは読めてたみたいだけど、手助けしてあげよう。

阿部先生の心、僕が少し動かしてあげたからね。



次の急展開には驚いた。

佐久間は阿部先生の心の中のもう1人が自分だと気づいた。

どうやって気付いたのか僕には読めなかった。

阿部先生は気付いてない。

その後、やっと気付いたのに、阿部先生はあえて仮面を被った。

阿部先生、僕の佐久間を受け入れてよ。


阿部先生の仮面を剥がしたのは佐久間のダンスだった。

その後の2人は僕にはなかった甘酸っぱい青春を手に入れた。

2人を見るのが楽しくなった。




断っておくけど、僕にも過去には恋人と定義する人はいた。

何人か付き合ったけど、付き合う理由が無くて、面倒で簡単に切り捨てた。体だけの人もいた。その方が楽だった。

好きとか嫌いって感情すら読み取れる僕には、恋愛に価値が見い出せない。


あと、僕は僕を欲する人が苦手というか、興味が無い。

僕は選ばれるより、選びたい。

高校の頃から大金が手元にあって、欲しいものは全て手に入れてきた。

僕を好きになる人は、僕自身ではなく、僕の付加価値を見ていた。もう、そんなのうんざりなんだよね。

僕は僕を見て欲しい。

容姿は大嫌いな両親から。僕のお金も大嫌いな両親から。
ダンスの才能で、誰かを好きになるの？

それって、ただの後付けの理由。

ダンスならロボットでも踊れるさ。


僕の心を見てくれる人。

それは阿部先生と佐久間と恩師だけ。

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