桃色の指先と翡翠の憂鬱 53

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佐｢どう？あべちゃんの髪の毛、綺麗になったよ｣

阿｢佐久間ありがとう｣

佐｢にゃは。ぎゅータイム｣

阿｢お礼にいっぱいするね｣

佐｢んふっ。あべちゃんがしたいだけでしょ｣

立ち上がって佐久間を抱き締める。

正座してて足が痺れて、佐久間にのしかかる形になる。

俺の体重を佐久間がしっかりと受け止めてくれた。



阿｢佐久間、愛してる｣

佐｢俺だって。あべちゃん、愛してる｣

阿｢佐久間、如恵留とキスするためには、佐久間といっぱいキスしないとね｣

佐｢にゃは｣

上を向いた佐久間の唇に口付ける。

阿｢佐久間、離さない｣

佐｢離れないよ｣

俺を見て笑う佐久間の笑顔が可愛くて、また唇にキスをする。

甘い甘い佐久間とのキス…。



佐久間がニューヨークに行っている間、ずっとしたかったこと。

佐久間の甘い唇を味わって、腕の中に佐久間を感じて。

足元に、猫の鳴き声と重み…。


佐｢花時雨ちゃん｣

阿｢邪魔された…｣

佐｢にゃはは。猫さんを邪魔なんて言わないでよ｣

佐久間が花時雨を抱き上げて、イチャイチャタイムは終了だ。


阿｢佐久間、俺は歯も磨いて寝るけどどうする？｣

佐｢んー。一応磨いておく｣

佐久間と2人並んで鏡を見ながら歯を磨く。


日常の変わりない風景でも、となりに佐久間がいれば俺には何物にも変え難い風景で。

鏡越しに見つめ合う時間も切り取って残したくなるほど大切。


佐｢さっきさー｣

阿｢ん？｣

佐久間が泡を吐き出して、口をゆすいでまた話す。

佐｢さっき、あべちゃんが変わることは悪いことじゃないって｣

阿｢うん｣

佐久間が大きく口を開けて、磨けてるか見せてくれた。

佐｢あれさ、ずっと進路指導してるあべちゃんだから言える言葉だよね｣

阿｢OK。そうかな。俺は変わるのが苦手な人間だけど、目標や夢を変えてはいけないって、凝り固まる生徒が多くてね｣

俺も口をゆすいで、佐久間に答えた。


佐｢ダンサーで生活するって目標だったけど、俺もニューヨークに行って変わったよ｣

阿｢うん｣

佐｢のえパパって、プライベートが0なんだよ｣

阿｢0？｣

佐｢全てが仕事に繋がってる｣

阿｢うん｣

佐｢俺のアニメ好きも立派な武器だって。あべちゃんの星が好きなこともいつか武器になるよ｣

阿｢そうだと良いね｣

佐｢そうなるよ｣




さっき斗真さんに経営学を学んでくれと頼まれたばかりで。


輝くように微笑む佐久間に、大好きな天文学で院にはいけないと言えなかった。

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