桃色の指先と翡翠の憂鬱 53

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佐｢あべちゃん｣

俺の大好きな声の主を振り返った。


阿｢佐久間、うるさくしないでよ｣

佐｢だいじょーぶ。俺も大人になったから｣

阿｢うん。おいで｣

腕を広げて佐久間を抱き締める。

佐｢おやすみのチューは？｣

白い肌に綺麗に生える赤い唇に軽く口付けて頭をくしゃくしゃに撫でた。



阿｢おやすみ｣

佐｢大丈夫？｣

阿｢動揺したけど、落ち着いたよ｣

佐｢俺、あべちゃんが先生やってる顔が好き｣

阿｢さっきも言ってたね｣

佐｢もう少しだけ、踏ん張ってよ｣

阿｢もう少し？｣

佐｢にゃは。俺のワガママかな…あべちゃんは先生が似合ってる｣

阿｢ギリギリまで教師は続けるつもりだよ｣

佐｢のえちゃんがニューヨークに行っても？｣

阿｢佐久間が行かない限りは、日本にいる｣

佐｢のえちゃんが来てって言ったら？｣

阿｢ニューヨークで俺がいない方が良いくらい、如恵留は忙しくなるよ｣

佐｢俺かのえちゃんを選ぶってことじゃないからね｣

阿｢わかってる。佐久間は如恵留と離れても平気？｣

佐｢のえちゃんとのえパパ、親子2人の時間も必要だよ｣

阿｢うん｣

佐｢あの2人ってさ、離れてるとめちゃくちゃ思い合ってて、のえパパはのえちゃんはこうだったって、小さい時ののえちゃんの話ばっかだよ｣

阿｢思い出をアップデートする時間もいるよね…｣

佐｢にゃす。さなぴーが戻るならあべちゃん行ってもいいよ｣

阿｢何それ…｣

佐｢にゃはは。さなぴーにヤキモチ？｣

阿｢さなぴーと2人は心配…｣

佐｢だーかーらー、あべちゃんは俺のそばにいて｣

阿｢佐久間の望みは叶える。ずっと一緒にいるって約束したからね｣

佐｢ありがとう。のえちゃんにおやすみって伝えて｣

阿｢佐久間もおいで。如恵留が寂しがる｣

佐｢にゃ｣



桃色の指先に、骨ばった手を優しく握る。

手を繋ぐだけでも、見つめ合って笑みがこぼれてしまう…。

たった数メートル、短い距離でも俺と佐久間のデートみたいで照れくさい。




学校のことも、佐久間がかなり有名になってきたこともあって、外で手を繋げる機会は当分ないだろうな。



ニューヨークなら、東京にいるよりもっと気楽にデートが出来るかもしれない。

ニューヨークに行くなと言われたのにこれではだめだな…。

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