桃色の指先と翡翠の憂鬱 〜Another Story〜

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陸上部の練習を手抜きしたあと、またバスケ部の見学。


大会が近いと本格的な練習試合だった。

3年生からあいつがレギュラーになれないようにしようぜって話してる声が聞こえた。

俺は人より聴覚が優れてる。

ふっか先輩は、3年生を睨みつけたけど試合は始まった。

みんなふっか先輩への当たりが強い。

これは潰そうとしてる。


あいつの足を狙え。


ふっか先輩に忠告したいけど、俺は陸上部の1年で見学の立場だから、体育館の入り口から動けなかった。

ふっか先輩がボールを持って、パスを出す瞬間に足を引っ掛けられて倒された。

笛が鳴って、相手のファウルになったけど、ふっか先輩は立ち上がった。

深｢先輩、今のは露骨ですよっ｣

3年の先輩が謝る素振りをしたけど、また小さくこいつうぜぇって声が聞こえた。

ふっか先輩、ムキになったらダメだ。相手は煽ってる。

ふっか先輩がリバウンドを取りにいった瞬間、3年生が激しくぶつかって左足首が関節とは違う方向に曲がった。

体育館に上がる悲鳴をかき分けて、俺はふっか先輩の元へ走った。


照｢ふっか先輩、保健室｣

深｢痛てぇ｣

照｢ごめんなさい、俺はわかってたのに｣

ふっか先輩をお姫様抱っこして、体育館から出た。

照｢あの保健室ってどこですか？｣

深｢は？｣

照｢俺、行ったことなくて｣

深｢職員室の反対｣

校庭をふっか先輩を抱えたまま走って、保健室のドアを足で開けて入った。


保健の先生が驚いてたけど、俺が必死の形相だったからわかってもらえた。

ふっか先輩をベッドに降ろして、保健室の冷蔵庫から保冷剤を出した。

照｢先生、救急車！関節が逆に曲がりました｣

先｢わかった。君、冷やしてて｣

照｢はい｣

深｢岩本君ごめん、かっこ悪いとこ見せちゃったなっ｣

照｢先輩、痛いのは足だけですか？｣

深｢えっと、肘も打ったみたいっ｣

照｢こっちも冷やしますね｣

冷蔵庫からもう1個保冷剤を出して当てる。

その手をふっか先輩が上から押さえた。

深｢ありがとう。岩本君が助けてくれるってなんかわかってたっ…｣

照｢え？｣

深｢俺、岩本君が見てくれるの嬉しくて｣

先｢救急車あと5分で来るって、えっと1年生また運んでくれる？｣

照｢はい｣

保冷剤を当てたまま、ふっか先輩をもう一度お姫様抱っこした。

昇降口まで運んで、ふっか先輩は痛みで俺の首に手を回して歯を食いしばってた。

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