25滴目 ページ26
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「あ、おかえりーって、Aさんどうしたの?顔色が悪いけど……」
『あ、あはは、ちょっと具合悪くなっちゃって……ごめん、今日の放課後ナシにしてもいいかな』
教室に帰るとスマホをいじっていたきんときくんが私の顔を見た途端にこちらへ駆け寄ってきた。
そんなに酷い顔してたのかな、私。
「え、うーん、具合が悪いなら仕方ないね……家まで送るよ」
『いや、大丈夫。一人で帰れるから』
彼の顔も見ずに鞄をつかみ、教室を出ようとしたら待ってよ、と腕を掴まれた。
「そんな顔してるのに1人で帰せるわけないでしょ」
『大丈夫だってば、ちょっと気分悪いだけで1人で帰れるから』
「はぁ、頑固だなもう…… 」
きんときくんが言えることじゃないでしょ、なんて軽口を叩こうとしたら優しい力でくいっと腕を引っ張られた。
「そんなに1人で帰れるって言うなら、ちゃんと俺の目を見ながら断ってよ」
『え、なんで、そんなこと、』
「ほらいいから!1人で帰れるの?本当に?」
『か、帰れる……』
私は彼の目を見ながら言うことはできなかった。おまけに声だってとても小さい。これでは心配してくださいと言っているようなものだ。
しかし、彼にこれ以上気を使わせたくはない。
私はもうそのまま腕を振り切って出ていこうとした。
「……ねえ、ちなみにAさんが掴んでるの俺の鞄だよ」
『へ!?うそっ、あ、』
……しまった。
「ふふっ、嘘でした!やっとこっち見てくれた」
『う、うう……もう!』
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作者名:ふわぴ | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2021年1月30日 17時