+ ページ47
*
『ねえスマイルさん』
「ん？」
『あの………あー……いや、なんでもないです』
息が、詰まってしまう。
前よりも柔らかくなった彼の瞳を見た瞬間、喉がぎゅっと締まってそこから先の言葉が発せなくなった。
もし断られたら、もうその優しい瞳は私に向かなくなるかも。
もう私に勉強なんて教えてくれないかも。
私のこと、ただの友達の妹としか思ってないのかも。
………なんて。
情けないほどにネガティブな可能性しか浮かんでこない。スマイルさんの彼女になる自信、まだ全然足りないや。
「そろそろ帰るか。シャークんに怒られるかもな」
『あはは、怒るかなぁ』
好きだからこそ言えないこともあるんだなって。
それに気付いたとき、さっきまで甘く感じていたカフェラテはじんわりとした苦味を口に残した。
もうすっかり暗くなった空にぽつんと浮かぶ丸い月。今日は満月なのかな、いつもより光が強い気がする。
隣を歩く彼に今のお店また行きたいですね、なんてありきたりな言葉をかける。彼は無言で小さく頷いた。
うん、これでいいんだ。
最初はスマイルさんの見た目に惚れたんだもの、彼の隣を歩けるだけで今は充分幸せ。だよね？
「A」
『なんですか？』
「大学受かったらうちでバイトしてよ」
『へ？バイト、ですか……？』
「そう。それとももうやりたいバイト決まってる？」
まだ高校生の私にそんなものあるわけなくて、ふるふると首を振る。それを見てスマイルさんはどこか嬉しそうに目を細めた。
さっき告白しようとしたせいかな、今日はやけにスマイルさんの行動全てに勘違いを起こしてしまう。
「じゃあ待ってるから」
『……なんで、私なんですか？』
「え？」
『別に私じゃなくても……ほら、経験もないような人が入ってきたら教えるの大変じゃないですか』
そんな会話と共に赤く光る信号機。
スマイルさんは少しどこか遠くを見て、目を閉じて、小さく息を吐いてからまた私を見つめた。
「高校で出会えなかった分を埋めたいって思うのは悪いことか？」
その声はかなり小さかった。
低くて掠れてて、車に掻き消されてしまいそうなくらい。
だけど私の耳には確実に届くくらいの……自惚れた私からすれば、それほど熱を孕んだ声で。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわぴ(プロフ) - うわ〜っ！ありがとうございます！！私もしらたま。さんの作品はこっそり読んでいて大好きな作者さんだったのでコメントまでいただけてめちゃくちゃ驚いてます…！うれしい😭😭こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました!! (3月11日 0時) (
レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ふわぴ(プロフ) - 美月さん» わ！嬉しいお言葉ありがとうございます💖こちらこそ、数多の作品で溢れている中この作品を見つけて下さりありがとうございました…！見つけてもらえてとっても嬉しかったです🥰 (3月11日 0時) (レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ふわぴ(プロフ) - ふりかけ。さん» ありがとうございます〜!!長編を書くのに慣れてなくて関係性の作り方等おかしくないかな…とちょっぴり不安だったのですが、気に入ってもらえて頑張った甲斐がありました😭✨ (3月11日 0時) (レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ふわぴ(プロフ) - Larimerさん» コメントありがとうございます！smさんとの会話はできるだけリアル感が出るよう考えて書いてたので褒めていただけて嬉しいです…！完結までお付き合いいただきありがとうございました💕 (3月11日 0時) (レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - 初めまして、初コメ失礼します！完結おめでとうございます✨密かにずっと読ませて頂いておりましたが、とても面白かったです。いつも投稿楽しみにしてたので終わってしまうのが勿体ないくらいです笑 素敵な作品をありがとうございました！ (3月7日 8時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふわぴ
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2024年1月20日 20時
