ふぉーみぃミニマムブックレット【短編集】 (ページ45)

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「ん……泣くほど嬉しかった？もしかして初めてだったとか？」
『うれしくない……っ、こわい、やめて』
「あぁ、確かに玄関に押し付けるなんて暴漢のすることだもんな。ほらおいで、ベッドまで運んでやる」
『っや！離して！！』

じたばたと暴れる私をいとも容易く持ち上げたスマイルくんは、そのまま寝室を探すため歩き始めた。彼の顔を一発ぶん殴ってやろうと思ったが、それすらも見透かしたような彼の冷たい視線に怯んだ私は指の1本すらも動かせなかった。

お目当ての部屋を見つけた彼は私を布団にそっと下ろし、逃げないようお腹の上に跨った。私よりも大きい男性の体重が、身体にずしりと伸し掛る。

もうダメだ、私はこのまま"顔だけがいい"スマイルくんから逃げられないんだ。
もう全てを諦めてただ涙を流すだけの私に、スマイルくんはちゅっと口付けを落とした。

「……っはは、嫌なら最初っから拒めばよかったのに。残念だな、こんな勘違い野郎に好かれて」
『っ……！やっぱり最初から、』
「可哀想だけどもう二度と逃がしてやんねぇから」

ギラリと光る眼光を隠しもしないスマイルくんはとうとう本心をさらけ出した。
この人は全部分かってたんだ、私が本気であんなことを言ったわけじゃないことも、私がスマイルくんを好きじゃないことも。

だけど、もう全てが手遅れだ。

「大好き、A。これから2人でずーっと一緒にいよ……♡」