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ちょうど満開の時期だったのか、小さな花がぎゅっとくっついて咲いているのがとてもかわいらしい。


『わぁ、近くで嗅ぐとほんといい匂い……スマイルも金木犀好きなの?』
「好きっていうか、今日読んでた本にちょうど出てきたからなんとなく」


お花好きなんてかわいい一面もあるんだなぁなんて期待したのに、彼から返ってきたのはいつもの本のこと。

また本の話かとちょっとがっかりしたけど、でもそれもスマイルらしいと思えばなぜか安心してしまった。


『それって休み時間に読んでたやつ?表紙の絵すごく綺麗だよね』
「え、人が本読んでるとこずっと見てたわけ?」
『ちょっ、人のことストーカーみたいな言い方しないでよ』


歩き出した彼に合わせて隣に並べば、自然と一緒に帰る流れになった。

席が近くだからって理由でなんとなく会話をしたことがある程度だったスマイル。
隣に立ってみると案外背が高いんだなとか、ただ細いだけだと思ってた腕もちょっとだけ鍛えられてることに気づいたり。
それにいつもよりも近くで聞こえる声になぜか胸がそわそわして落ち着かなかった。


「んで……A、聞いてるか?」
『え、あっごめん聞いてるよ。主人公が金木犀のお花ちぎってどうのこうのみたいな話だっけ』
「お前の方こそ言い方悪すぎだろ。金木犀で栞を作ったって話だよ」
『栞かぁ。金木犀って押し花にしても匂い残るのかな』


学校で話すときよりも中身のない会話だけど、それがどうしようもなく楽しくてこの時間が終わってほしくないな、なんて考えちゃう。


……スマイルはどう思ってるのかな。

ふと彼を見上げてみると、いつもと同じのどこか気だるそうな目が空から私へと視線を移した。


「なに?急に見つめられると怖いんですけど」
『だから変な言い方しないでってば!』
「落ち着けって、冗談だよ」


ふっと楽しげに細められた目を見た瞬間私は悟った。


あぁもう、ダメだこれ。


さっきよりも薄暗くなったオレンジ色を背景に私を見て笑った彼の顔が、頭に焼き付いて離れない。
認めたくなかったのに、淡い恋心は目を逸らしたうちに大きくなりすぎてたみたいで。



そんな顔するなんて知らない、ズルいよスマイル。

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ふわぴ(プロフ) - ビー玉さん» ありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりでものすごくモチベに繋がりました。これからも丁寧な表現と読んでいて楽しいお話が書けるよう頑張ります! (5月25日 13時) (レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ビー玉(プロフ) - めっちゃ好きです!個人的に特に好きなお話は傷ごと愛してです。特に最後のページでまるでその世界を眺めているような柔らかな感じが顕著に感じられて思わず涙が出でしまいました。いつも美しい作品ありがとうございます。これからも応援してます! (5月22日 1時) (レス) @page20 id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふわぴ | 作者ホームページ:http://urana  
作成日時:2022年8月1日 14時

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