アクリル恋模様 (ページ9)

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偽契約式/Nkm ページ9

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部屋からは出られないけど部屋の中なら自由に動き回れるのと、部屋からも出られなければこうしてベッドの上でしか動くことができないのって、どっちのほうが愛されてる状態にあると思う？

さっきからずっと愛おしいものを見るかのような目で私のことを見つめ続けるなかむにそう訪ねると、彼はなにそれ、と言った顔をして即答した。

「えぇ、そりゃ後者に決まってるでしょ」

彼は今の質問で少し気を害したのか、納得いかない様子で私の髪に指を通してくるくると弄りはじめた。

窓を見ると暖かな日差しが差し込んでいるように見えた。といってもあれはディスプレイに表示されたただの偽物の景色なんだけど。
どういうわけか私が過ごしやすいようにと、あたかも本物の時間の動きが見えるかのような窓の形をしたそれが設置されたのは最近のことだった。

私のことを考えてくれるなら、もうちょっと他の気の使い方をしてほしいんだけどな？

『私はまだ部屋の中くらい歩けたほうが愛されてるって感じるけど』
「そんなことないって。だってそんなの中途半端じゃない？欲しいものがあれば俺が何でも用意してあげるから君は動く必要だってないわけだし」

それも俺の愛情の現れなんだけどなぁとつぶやく彼は恐ろしいことに、とてもキラキラとした目をしていた。

いつの間に持ってきたのか、櫛で私の髪をさらさらととかすなかむ。もう片方の手には先程まで彼が自分の髪を縛っていたゴムが握られていた。
私は手持ち無沙汰だったので腕に繋がれた鎖をガチャガチャと弄びながら、特に拒むこともせず彼のしたいようにさせていた。

これもよくあることだ。なかむが好きな見た目になるために、彼に身だしなみを整えられる。
私が好きなジャンルとはちょっと違った女の子らしい服を着せられて、彼の気分がいい日はメイクまで施される。

……そのメイクも無駄にキラキラきゃぴきゃぴとしていて、ナチュラルなのが好きだった私はあまり気に入らないんだけど。