気をつけろバカ！ (ページ8)

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① ページ8

大先生のマンションの部屋の前に立つ。丁度住人がドアから出て行くところだったので、そのままちゃっかり入った。先程から何度もインターホンを鳴らしているが一向に扉を開いてくれない。緊急事態のくせに。いや緊急事態だから開けられないのかと思い、ライン電話をかける。

『入ってええから！！！空いとる！！！』

何も言ってないけどそれだけ聞いて、通話切り扉を開ける。掃除があまりされていないのか、ダンボールやペットボトルが転がっている。
お邪魔しま～すと靴を揃えて入る。関西人特有の返事がない限り、彼はかなり危機的な状況にいるのだろう。面白そうと思って開いたリビングは地獄だった。

「Aちゃん！！まじで助けて！！」
「こっち向いて言わないんかい」

大先生はソファの上に立ち、片手に丸めた新聞紙を持っている。紺色のセーターを着た後ろ姿しか見せずに、私に助けを求める。大体その格好で予想がついたので扉を静かに閉めようとする。

「ちょっとお！！」

音に気付いたのかこちらを一瞬振り返ったが、また顔を戻した。よくにらめっこできるね…。「帰らんといて！！！！」と叫ぶ大先生はずっと地球外生物と睨み続けている。いや地球に住んでいるんだけど。

「目、ほんま離せんの！！ほんとさっきからこの状態なんやって…」

彼曰く、奴がいきなり本棚の下から出てきて近くにあった新聞とスマホを持って安地ソファの上にいるらしい。友人…ショッピくんは面白がってるだけで来ないし、シャオロンは使い物にならないので私を呼んだらしい。いや私よりも使える人間いたでしょ！

「関わりたくないんだけど…」
「これ、僕1人に対処させるつもりなん！？」
「か弱い女性にアイツ殺させるつもりなの！？」

材料パンパンのバッグをゆっくり廊下に置く。今すぐに帰りたいのだが、ここまで来たのなら何かやらなければと考えてしまう人間である。私と大先生、2人で協力して倒そうと言えばメソメソと情けない声を出した。オノマトペを喋るな。これで貸しを作った。