気をつけろバカ！ (ページ3)

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③ ページ3

「う…鍵、家の鍵ないんです……」
「ああ…」

社畜のトントンさん。華金に早く帰れてきたと思ったら鍵がない。それは確かに精神的にダメージが大きいし、あんな真面目な人がこんなにも語彙力が低下するのもわかる。納得して哀れなトントンさんをゆっくり引き剥がす。

とにかく誰かご友人に電話させた方が早いと解決策をひらめく。声をかけようとするとチャリンと私の足元で音がなる。靴とコンクリートの間に異物が入ったような感じして、足をゆっくり上げる。

そこには銀色に光るなにか…

「トトトト、トントンさん！！！！鍵！！鍵ありました！」
「え嘘ォ！！？」

急いで拾い上げると、私が持っているマンションの鍵と全く形が同じだ。マンションの鍵は各部屋によって多少違いがあるのだけど、形はほとんど一緒なのだ。
トントンさんの目の前に出すと、死んだ目にハイライトが宿る。華金だもんね…。

「ホンマにありがとうございます…お詫びに、今度暇でしたらまた飯行きましょう」

先ほどの半泣きの顔とは一変、眉が下がっているが優しそうないつもの彼の顔に戻る。前はラーメン屋に行ったし、今度は美味しい洋食屋さんとかいいな…。

「はい！あぁ、えと鍵足元にあったので…！気をつけてくださいね～！」

まあ落としてもあまり視力が良くないらしいトントンさんは気づかなそうだしな。おやすみなさいと声をかけてドアを閉める。トントンさん、少し耳が赤かったけど寒いのか？

それでもあんな取り乱したトントンさんを見るのは初めてで、面白かったなと笑ってしまう。すると、なんか隣から声が聞こえた。洋食屋さん誘おう。

「ああぁぁぁあああ！！恥ずかしッ！？あしもっ、足元あったって何！？なんで気づかへんの俺！？焦り方キモすぎん！？」