4.夢からさめて ページ16
彼と出会ってからもう半年が経った。
そして、
彼と一緒に笑っていられる時間はあと半年。
数年だけ先に生まれてしまった自分を恨んだ。
もし、彼と同じ歳に産まれていたら。
もし、彼が私と同じ3年だったら。
そんな事ばかりが頭に浮かんでは消えた。
【もし】なんて全てが希望的な話で、どう足掻いたって【今】には勝つ事なんて出来ない。
「Aさん？聞いとります？」
少し考え事をし過ぎたようで、目の前のショッピくんが不安そうに私を見ている。
「あぁ、ごめん。なんだったかな」
「大丈夫っすか、やっぱり受験生だからって詰めすぎなんじゃ」
「大丈夫。…うん、大丈夫だよ」
へらりと笑ってみせる。けれど彼はまだ不安そうな顔。違う、私はショッピくんを困らせたい訳じゃないんだよ。
ただ、
「なんで私は君の…ショッピくんの先輩なんだ、って思って」
ぱき、という音に続いてからんと氷が崩れた。
「…うん、それで？」
指の先だけ冷たい彼の手が私の手に触れる。
「だって、私がショッピくんと同じ1年だったらあと半年じゃなくてあと2年半一緒に居れた」
「うん」
目の前が涙で滲んでよく見えない。それでも彼が真剣に話を聞いてくれているのがわかる。
「…逆にショッピくんが私と同じ3年だったら、高校3年間なんてあっという間だった」
一緒に居た半年もう過ぎ去ってしまったのだから、きっとそれは当たり前だった。
「なるほど。Aさんが不安に思ってる事はわかりました」
ふわりと嬉しそうに、それでいて意地悪な笑みを浮かべる彼。
「つまりは卒業して俺と離れるのが嫌ってことやろ？」
「そうだよ。私はショッピくんと離れたくない」
「でもまぁ、最初から離す気なんて無いんでそれは杞憂っすね」
「へぇ、言うじゃない。離したらどうしてやろうかしら」
「さっきまで離れたくない〜って泣いてた人とは思えない発言ですよそれ」
いつの間にか彼の指先は暖かくなっていた。
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