後輩のつまみ食い【企画】 (ページ15)

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チラリと店主さんの方を伺えば、さも見てないですよ。という顔でコーヒーカップを拭いている。あの顔は絶対見てる。なんてことをしてくれたんだ、と恨めしい視線を向けるが、そんな私の視線はどこ吹く風。華麗にスルーされる。
「ほら」
そう言って、最後に少し残っていたオムライスをスプーンで掬われる。
「あーん」
「は？」
「あーん」
無言の圧力に逆らえず口を開けば、スプーンが差し込まれた。ぱくっと食いつくが、尚も抜かれぬスプーン。入れられたままでは喋ることもできない。
「ん！！ん！！！」
ジェスチャーで抜いて、と伝えても
「なんて？うまいって？よかったな」
とほぼ棒読み口調ではぐらかされるだけ。
そして、やっとのことでスプーンを抜かれ、彼に文句を言おうと口を開くが、
「ここ美味しかったな…また来ような」
と穏やかな笑顔で言われ、またなにも言えなくなった。私はとことん彼の顔に弱い。

時計が2時半を指して、そろそろ店を出ることにした。お会計の途中、店主さんはショッピくんに如何でした？と聞き、彼はまた来ます。と答える。
スタンプカードにぽんぽんぽんと、こぎみよくスタンプを押す手元をチラリと見ると、あと少しでいっぱいになりそうだった。
「このカードいっぱいになると、お好きなスイーツ一品お付けするのでよかったら貯めてください」
そう言って私に微笑む店主さん。
「はい！ご馳走さまでした」
そう伝えて店を出る。

自然に取られた手を握り返し、今度はどこへ連れてってくれるんだろうと胸を踊らせる。
「…ありがと」
彼に聞こえないようにそう呟く。
あのスタンプの量はきっと彼が何度かあのお店に足を運んだ証拠。今日のデートのために、私のために下調べをしてくれた証拠。
ありがとう、ショッピくん。
意地悪だけど、優しくて、でもその優しさはあんまり見せてくれなくて、ちょっぴり難しい貴方が大好きです。

握り返した手に力が込められる。
気づいたことは伝えなくていい。2人の間で通じ合っていれば、それで。
貴方の隣に居られれば、それだけで幸せ。

またあのお店行こうね。
これからもよろしくね。
そんな思いを込めて、もう一度ぎゅっと彼の手を握り返した。