【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ10)

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210．これからもずっと、ページ10

大丈夫だと言い続ける炎真にAの固かった意志が揺らぎ始めた。Aが話すかどうか迷っていると察した炎真は、自分がどんな顔をしているのかも知らず隣に座る彼女に目を向ける。

「僕に言えばいいよ」
「……」

この状況で、弱さをあまり他人に見せようとしないAが誰かに頼りたくても頼ることができないのは、一年も過ごしてない炎真にもわかっていた。ふと、綱吉が強がるAを気にかけてあげてほしいと心配していたことを思い出す。

Aの幼馴染(すきなひと)に言われたからこんな行動をしているわけじゃない。…………僕だって君のために動いて、君の力になりたいって思ってるんだよ。

「前に言ったよね。僕は恋愛感情とかわからないって」
＿＿＿＿胸が痛い。

「未だにその感情は知らないし理解もできないけど」
＿＿＿＿自覚しなければよかった。

「何を聞いても、僕は変わったりしないよ」
＿＿＿＿変えられるわけがない。

「これからもずっと、…………Aの友達だよ」
＿＿＿＿だって、好きだから。

「絶対変わらないから、安心して、頼って？」
＿＿＿＿今だけは、僕を見て。

「ね、A」と笑いかける炎真は、Aを慰める中で漸く自分の感情を自覚した。“友達”を望む彼女の側にいるためには、気持ちは封印しなければならない。好きだと伝えることも、簡単に触れることもできない。

炎真は、自分が今にも泣きそうな酷い顔をしていることも知らずに、何度も彼女の名前を呼んだ。

「友達なんだから、頼ってよ」

その言葉を聞いて、彼女は我慢の限界だとばかりに溜め込んでいた目の中の雫を一気に溢れさせた。ポロポロと次々溢れてくる涙を両手の袖で拭っていたAは、俯いて声を殺しながら身体を震わせる。

「……A」

Aは炎真と正反対に思えて、少し似ているところがあった。炎真はそれを理解していた。独りで悩みを溜め込んで、抱えられなくなった途端に爆発させる。島で綱吉達と戦ったときに自分がそうだったように。

誰かに助けを求めたいとき涙が止まらなくなるよね。今も誰かに口止めされたかのように、話したくても言葉が出てこないんでしょ。……大丈夫、僕はちゃんとわかるよ。

「大丈夫。大丈夫だよ、A」

＿＿＿＿僕は、ずっとAの側にいるよ。
心の中で続けた言葉は声にならなかった。綱吉と炎真の名前を意図せず呼び間違えたあの日のAの顔を、不意に思い出してしまったから。