【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ9)

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209．……僕を頼ってページ9

「全然大丈夫そうに見えないよ」

自分だけで悩んでたって……、と慣れない慰めを言葉にしているとずっと黙っていたAが「……頼れる人がいないんだよ」と小さく呟いた。

＿＿＿＿Aは、もう我慢の限界だった。

親友の京子は綱吉の好きな人。花はそれを知って綱吉をからかっている。奈々さんと仲良しな自分の母親にも相談できない。

ふと、自分が唯一頼っていた隼人のことをAは頭に思い浮かべる。信頼していた彼がいつも助けてくれたのは、そこに恋愛感情があったからなのかもしれない。友情だと思っていたのは私だけだった。そう自覚してからは、散々頼って迷惑をかけてきた隼人にだけはこれ以上綱吉(すきなひと)の話はしたくないと思うようになっていた。……だって、大切な友人だから。

「私だけで解決できるから大丈夫。自分の問題で、これ以上誰かに迷惑かけたくないし」

恋愛感情を理解できない炎真となら男女の友情は必ず成立する。今までそう言い聞かせてきたAにとって、この状況は良いものではなかった。自分がそう願いたいだけで、実は“一方的な友情”だったらどうしよう。炎真の態度に変化が訪れる日を恐怖している。

「迷惑じゃないよ。それに、誰かに話せばきっと……」
「話しても何にもならないよ！」
「……」
「……ぁ、ごめん。私、今日変だね。せっかくだけど、映画行くの後日にしてもらってもいいかな」

強く言い返したのは、ただの八つ当たり。Aは自身の抱えきれない感情の波にのまれそうだった。誰かに頼りたいのに、余裕のない思考のせいで視野が狭くなっていることにも気付けない。

「……僕を頼って」
「……炎真は綱吉の親友だから」
「それは変わらないから安心して」

炎真は膝を抱える彼女の服に数滴の雫が落ちたことに気が付いた。綱吉に振られた後も彼のことが忘れられないと照れながら話してくれたAに、彼の告白する姿を見せるなんて神様は残酷にも程がある。

「炎真まで、私から離れていきそうだから」

自身から離れていった綱吉のように。
友情が恋情に変わった隼人のように。

「大丈夫、A。どこにも行かない」
「…………炎真とは、ずっと友達でいたいから」

自分の醜い部分をさらけだしてきた隼人は、ただの友達ではなくなった。深い話をすれば、私がここで頼ってしまえば、この心地よいだけの関係が変わってしまうかもしれない。Aはそれが怖かった。

「＿＿＿＿大丈夫だよ」