【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ31)

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231．綱吉が全然わからないよページ31

一瞬、確かに時が止まったような気がした。

理解できない言葉の羅列と既視感のある綱吉の表情に、Aは言葉を失う。夢にまで見た綱吉の台詞に、喜び以外の感情が飛び出すのも無理はなかった。

「じゃあ、京子は？」
「京子ちゃんのことは……」
「また勘違い？」

Aは、素直に彼の言葉を受け入れられるほど単純ではなかった。私が今まで憧れてきた大切な親友を騙してきたのかと、頭のどこかではあり得ないとわかっているつもりが、一瞬でも浮かんだ思考がAの感情の邪魔をする。

Aは綱吉の京子に対する態度を思い出しながら「ごめん、私、見ちゃったの」と綱吉から握られた自身の手に視線を落とした。

「この間、京子に告白してたよね」
「……見てたの？」
「見るつもりは全くなかったんだけど」

グイッと引き寄せた京子の頬を片手で掴む綱吉の姿が鮮明に浮かんだAは、これ以上泣くことを堪えるように目元に力を込める。

京子に告白したものの、やはり2度目も振られたために、好意を確実に向けてくるような都合の良い私のところに来たのかもしれない。

失恋の苦しみを忘れるために、隼人や炎真と過ごしてきたかつての自分と綱吉を重ねるAは、それが偏った思考だとも気付かずに小さく呟く。

「綱吉が全然わからないよ」
「……京子ちゃんは皆の憧れで、初めてA以外に声をかけてくれた人だったから、それが嬉しくて仲良くなりたかったのは本当だよ」

綱吉は京子と初めて会話をしたときのことを思い出す。詳しいことは忘れたが、Aの話だったことは覚えていた。

初めて京子とAの話をしたと本人に伝えたとき、彼女は「京子って優しいでしょ？本当に可愛いんだよ」と楽しそうに笑ったのだ。＿＿綱吉は、そのときのAの笑顔が脳裏に焼き付いて離れないでいた。

「俺と一緒にいるとき、Aはいつも楽しそうに京子ちゃんの話をしてたこと覚えてる？」
「……ううん」
「声をあげて笑うAを見てるのは楽しかったし、Aに親友ができたことが俺も嬉しかったんだ」

ふと、Aの笑顔を見たいがために京子の名前を進んで出していた過去を思い出した綱吉は、それからのAの切ない表情を頭に浮かべながら「でも、だんだんAはその笑顔を見せてくれなくなって……」と続ける。

綱吉が京子を気にかけるようになったのは、彼女がマドンナであっただけでなく、Aが頻繁に京子の話題を出すことが原因でもあったのだ。