【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ29)

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229．私の好きを否定しないでページ29

「こんなに胸が張り裂けそうになるのも、こんなに胸が苦しくなるのも、全部私の勘違いだって言うの？」

Aは、恋愛感情を向けられることを嫌に思った綱吉からその感情は気のせいなのだ、と言い聞かせられていると思った。

今まで綱吉に感じてきた胸の高鳴りも、嫉妬して傷つき見て見ぬふりをしてきた自分の行動も、全てが勘違いだと言われているような気がしてAの涙の勢いが増す。

「綱吉が私のことを家族のように思ってるのも知ってるよ」
「それは……」
「綱吉が、私じゃなくて京子を好きなのもわかってるんだよ」

いっそのこと“嫌い”だと突き放してほしい。立ち直れないくらい傷つけられた方が、期待せずに済むのに。震えたAの声が、消え入りそうな小さな音に変わる。人生で一番最悪な誕生日になりそうだ。乾いた部分がなくなった袖で涙を拭いながらAは「好きになっちゃったんだもん」と続けた。

「綱吉が、私の好きを否定しないで」

綱吉は目を見開いたまま、違和感に気付く。
＿＿＿＿まさか(・・・)。
しゃくり上げるAを一歩退いて見ていた綱吉が彼女よりも先に真実にたどり着いた。

一方、目を瞑ったままのAは、初めて綱吉に『京子が好きなの？』と質問した日のことを思い出していた。そのときの表情が“好き”を物語っていて、本人の口から聞くことが怖くなり『やっぱりいい』と逃げたのだ。

「…………ずっと私だけの綱吉だったのにね」
「A、俺」

告白する現場を先日目撃したAにとって、綱吉の感情を認めざるを得なかった。信じたくなかった事実を目の当たりにしてしまったのだから。

＿＿＿＿もういいや。
Aは、振られて諦めようと努力したが、告白現場を目撃してもなお綱吉を忘れることはできなかった。それも今日で終わりにしようと自分に言い聞かせて「綱吉は、誰が好きなの？」と口にした。

「俺は……」

綱吉はAの問いかけに動揺が隠せないでいた。彼女にされた質問に驚いたのではない。先日リボーンに全く同じことを訊かれ、その瞬間一番に頭に思い浮かんだ人物を思い出したのだ。

Aは分かりきっていることを訊く自分の煩わしさに呆れながらも、綱吉の回答に出てくるであろう親友の笑顔を思い出していた。

涙が落ち着き前が見えるようになったAは、恐る恐る顔を上げる。優しい表情を浮かべていた綱吉は、意を決したように口を開いた。

「＿＿＿＿俺は、京子ちゃんが好き」