【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ28)

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228．戻れないんだよページ28

「退いて」
「A」
「奈々さんには私から話すから」

＿＿自分は、なんて面倒くさい女なのだろう。
Aはそんなことを考えながらも、泣き顔を見られたくなくて下ろしたままの髪の毛で顔を隠す。聞き分けの悪い子どもにでもなったようで、綱吉と一緒の空間にいることが恥ずかしい。

「待って！」
「……京子が好きなくせに、私に触らないで！」
「何で？そんなこと今は関係ないだろ」
「嫌だ、離れて」

少し落ち着けって、と焦燥を顔に浮かべる綱吉は余裕のないAを強引にベッドに座らせる。床に膝をついた綱吉は、彼女の手から荷物を奪い、見上げるようにして「急にどうしたの？」とAを逃がさないように横に手をついた。

「京子ちゃんの話を始めたのはAだよ」
「うるさい、もう帰る」
「A！」

反論の言葉が浮かばないAが逃げ出そうと立ち上がるが、綱吉が想像よりも近くにいた為か、上手く立てずに体勢を崩してベッドに倒れそうになる。それを綱吉が慌てて支えたことで、2人の距離は一気に近くなってしまった。

「ご、ごめん」

狼狽えた綱吉が一歩退くと、Aは「ずるい」と小さく呟いた。眉と目尻を下げてポロポロと涙を流すAが声を裏返しながら「いっそのこと嫌いになってくれた方がましだよ」と続けると、綱吉は久しぶりに見たAの泣き顔に動揺して返す言葉を必死に考えて唇を噛んだ。

「これ以上、期待させないでほしいの」
「……期待？」
「私を振ったこと忘れた？京子が好きなら今までみたいに気安く触れないで」
「……A、どうして」
「綱吉と話すだけで、私がどんな気持ちになるのか考えたこともないでしょう？」

Aは未来から帰って来てすぐに綱吉に抱きしめられたことを頭に浮かべて話す。優しい綱吉が告白ぐらいで態度を変えたりしないことも本当はわかってたはずなのに、“幼馴染”を続けられることがこんなに苦しいものなんて知らなかった。

綱吉が呆然と立ち尽くしていると「昔みたいには、戻れないんだよ」とAの震えた声が部屋に響いた。その言葉に我に返った綱吉が、慌てて「違うんだ！」と大きな声を出す。

「ただ、Aの好きと俺の好きは意味が違って」
「それはわかってるよ」
「わかってないよ！Aは勘違いしてるんだ」

あの(・・)Aが自分に恋愛感情を持つわけがないと思い込んでいる綱吉は、彼女の気持ちが勘違いだと本人に理解させる方法を必死に考えていた。