【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ3)

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203．断られなくて、よかった…… ページ3

「嫌な夢？」
「うん。今でも後悔してる、昔の夢」

彼女の言葉から軽く続いた無言に、炎真は「思い出したくないことって、たまに夢に出てくるよね」とフォローをいれた。自身も、殺された両親や妹の最期の姿が何度も夢に出てきて苦しんだことがあったからだ。

せっかくAとの電話なのに、このままでは暗い雰囲気で会話が終わってしまうような気がして、炎真は慌てて「そうだ、A。今日って予定とかあるの？」と問いかける。

「今日は何もないよ。炎真は？」
「僕も。あのさ、Aがよかったら今日映画観に行かない？」

映画のギフトカードをアーデルが2枚くれたんだと伝えようとして、ふと我に返る。僕が貰ったものだと知れば、きっと彼女は自分の為に使うべきだと遠慮するだろう。

せっかく誘ったのに断られたら恥ずかしい。一緒に映画を観たい人なんて他にいないのに、と必死に次の言葉を探した。

どのように誘えばAは来てくれるだろうか。
どのように誘えばAに会えるだろうか。

＿＿＿＿炎真は気付いていなかった。
以前は、Aを誘うのに理由が必要だと考えもしなかったことに。彼女に会いたくて、断られないような誘い文句を必死に考えていた彼は、まだ自分の中に芽生えていた感情を理解していなかった。

「……いいね、映画行こう。私もそろそろ観に行きたいって思ってたの」
「本当に？じ、じゃあ、何時にする？」

その後も、少し元気のないAの笑った声が聞きたくて、無意識に電話口で笑いかけていた炎真は、時間と場所を決めて通話を切ってもなお「服、どうしよう」とそわそわした気持ちを隠せないでいた。

「断られなくて、よかった……」

＿＿＿＿一方、その頃。

Aは、炎真に誘われたことに驚きつつも、悪夢をみたと言う自分の気分転換のために誘ってくれたのだと判断し、彼の優しさに嬉しさを感じていた。

綱吉の行動力を過小評価して、京子への告白の後押しをしてしまった日の夢をみて飛び起きたA。朝から気分は最悪だったというのに、炎真に誘ってもらえたおかげで今日はいい日になりそうだと鼻歌交じりに準備する。

「観る映画、決まってるのかな」

クローゼットに向かい、取りやすい位置にあったパーカーワンピースを手に取る。ふと隣のハンガーにかけられたコーデュロイのワンピースが目に入るものの、綱吉のために買ったあの服の出番は今日はないからと扉を閉めた。

「……綱吉、今何してるんだろう」