【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ16)

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216．……来るよね？ページ16

「あ、ツナ君も知ってるよ！」

付け足された言葉を聞いて、平常心を装っていた表情が崩れ出し、一気に動揺が隠せなくなった。「へぇ」と続けてAは拳を握りしめる。あの現場に居合わせたところを見られたのかと疑問は残ったが、それ以上訊く気力はAにはなかった。

どうせ綱吉に見られるのなら、とクローゼットの中を思い出す。あんなどうでもいい服じゃなくて、隣のハンガーにかけていたコーデュロイのワンピースを着ればよかった＿＿なんて。綱吉中心で世界が回るAには、思考の制御ができるはずもなかった。

「あ、ツナ君来た！」

ふと扉に視線を向けると隼人と共に教室に入る綱吉の姿があった。楽しくて仕方がないとでもいうような笑顔でAとの会話に夢中になっていた京子だったが、彼が来たことでそれを中断させる。

「ちょっと行ってくる」と綱吉の元へ向かった京子の後ろ姿を眺めながら、Aは今月に入ってからやけに2人で話している彼等を見かけることを思い出した。

最初は照れていた綱吉だったが、京子に鞄の中身を見せられると徐々に笑顔は増えていった。いつの間にか共通の話題ができたのだろう。Aは楽しそうな二人をこれ以上見るのが辛くて目をそらした。

「リボーン君の洋服？いや、またお守り？手作りお菓子とかもあり得る……クリスマス近いしクリスマスプレゼントかな」

ぶつぶつと無意識に呟きながらAは窓の外を眺める。そんな小さな声は誰かに聞かれることなく、静かに空気に溶けていった。

何かに集中していないと彼等のことばかり気にしてしまう。Aは時間を潰すように携帯を手にし過去のメッセージを遡っていた。すると『近いうちにご飯食べにいらっしゃい』と書かれた文章が目に入る。

奈々とのやり取りを見返していると『時間ができたときに行くよ』と自分が彼女に返信したことを思い出した。どれほど傷ついたとしても綱吉への感情は消えない。精神的にもできるだけ沢田家には近付きたくなかった。

「A！」
「……えっ、と、どうしたの？」

何やら慌てた様子の綱吉の背中を押してAの元へ戻ってきた京子は、彼の肩から顔を覗かせて「今度クリスマスパーティーをツナ君の家でやるから、Aも来てほしいの！」とにっこり笑った。

「……来るよね？」と言った綱吉の顔は少し赤くなっていたが、彼の肩に京子の指先を見て察する。悲しむ間もなく、これは距離の近さに照れてる表情だと理解してしまった。