【REBORN】最高の幸せ 5【沢田綱吉】 (ページ14)

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214．…………奈々さん？ページ14

結局、映画に行くことを諦めたAと炎真は昼過ぎに解散した。涙が止まらない彼女の側に居続けるつもりだった炎真が、Aの「今日は独りになりたい」という願いを聞けないはずがなかったのだ。

今日の約束は延期してほしい、と落ち着いた涙が再び溢れる前にまた改めて連絡することを伝えて自宅に帰って来たAは、光のない瞳で綱吉の家を眺める。そのまま、視線を落として玄関の扉に手を掛けた。

「ただいま……」

自室に駆け込みすぐに座り込んだAは、目元に入れていた力を緩める。あれほど泣いたというのに涙は枯れることを知らないらしい。

＿＿＿＿Aは、綱吉が京子に告白したきっかけを知らない。互いにすれ違っていることも、誤解が重なっていることも、何もかも。

昔は秘密や隠し事なんてなかったはずだった。いつもAを頼り、彼女に相談して物事を判断することが多かった綱吉。他人への憧れや羨望を口にするばかりで、欲があったとしても滅多に行動に移さなかった彼が、事前にAに相談することなく“京子に告白”という思いきった行動をするとは思えなかった。

それもそのはず。始まりともいえる彼の告白も、今回のことも＿＿全て“死ぬ気弾”というボンゴレファミリーに伝わる特殊弾が関係していたのだから。

死ぬ気弾は、その弾丸で脳天を撃ち抜かれて死んだ場合、その人の死ぬ前の後悔を“死ぬ気”で頑張る状態にして生き返らせることができるというもの。後悔がなければ一発で人生終了の弾丸を、綱吉は出会ったばかりのリボーンに撃ち込まれ京子に告白した。

もちろん彼女に相談できる時間も余裕も綱吉にはなかったというのに、Aは突然突き放されたような、今まで騙されていたような＿＿そんな言葉では表せないような気持ちをあの日からずっと抱えていたのだ。

「……本気で告白するときは下着になるタイプなのかな」

Aは、綱吉と好きだと純粋に好意を伝えあっていた頃を思い出す。ままごとレベルの会話を本気にはしていないけど、思えばちゃんと服着てたなぁ……なんて。

泣き腫らして目がヒリヒリと痛む。充血して瞼も赤くなっているだろう、と泣き疲れて冷静になった頭で顔を洗いに洗面所へ向かう。顔を洗い終えるとAのポケットに入れていた携帯がメッセージの受信を知らせて震えた。

「…………奈々さん？」

そこには、悩みの種である彼の母親からの『近いうちにご飯食べにいらっしゃい』という文章が綴られていた。