【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ10)

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160．炎真らしいねページ10

「だって、彼氏ができたらもうここには来ないでしょ？」
「……えっあ、そ、そんなことを心配してたの？」
「……猫達が寂しがるから」

「大丈夫だよ、彼氏できる予定もないし」と笑いながら恋愛感情を持たれていないことに安堵する。暗くなり始めた赤い夕焼けに照らされる炎真の横顔。ふと身体を起こして彼の顔を覗き込んだ。

「……炎真は好きな人とかいないの？」
「……別に。恋愛感情とかわからないし」
「炎真らしいね」

暫く考え込んだように黙っていた炎真の「僕も、誰かを信じられるようになるのかな……」と遠くを見つめるその様子を見ていると、何故か切なくなり反応できない。

炎真は、たまに全てを諦めているような表情をする。その中には救いを求めるような期待も含まれていて、過去に何かあったのだろうかと気になるが、詮索しないように意識していると「Aは？」と訊かれた。

「……考えるだけで胸が苦しくなっちゃう人はいるよ」
「そうなんだ」
「まだ恋してるって、認めたくないんだけどね」

私恋愛向いてないや、と笑うと炎真は「誰かを好きになるって大変だね」と他人事のように呟く。「炎真もいつかわかる日が来るよ」なんて大人ぶって答えながら、適切な距離を保ったままでいてくれる彼に歓喜の眼差しを向けた。

＿＿炎真は、私を好きになったりしない。
恋愛に興味がないような素振りの彼なら、これからも変わらず私とこの距離感で友達として接し続けてくれるはず。やはり男女の友情は成立するんだ、と嬉しく思いながらも隼人のことが頭を過る。

今までの異性の友達が悪かったとは考えていない。好意は純粋に嬉しいし恋愛を楽しみたいのもわかる。……だけど、やっぱり綱吉よりも素敵な人は私にはわからないから。

「A」
「何？」
「これ、あげる」

ふと未開封のスポーツドリンクを手渡されて目を見開く。本当は、お見舞いに何を持っていくか迷って飲み物にしたものの、迷惑ではないかと心配になったときに河川敷にいる私を見つけたらしい。

「僕は飲まないし、せっかくだから」
「優しいね、炎真」
「普通だよ」
「……ありがとう」

嬉しい、と受け取ったスポーツドリンクを腕の中に閉じ込める。その瞬間、今朝まで沈んでいた気持ちがすっかり晴れていることに気がついた。

「そろそろ帰ろうかな」
「僕も帰るよ」

あまりの心地よさに浮かれていた私は、これから事件が起こるなんて考えもしなかった。