【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ40)

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190．何もしないからさページ40

「……綱吉のことは頼りにしてるよ」

私が今までダメツナ扱いしたことないの知ってる癖に、と考えながら手元のシーツを握りしめる。黙ったままの綱吉の考えていることがよくわからなくて、気にしないでほしいの意味を込めて笑いかけた。

「それに、今回のことはもう終わったことでしょ。今さら何かを言ったところで過去が変えられるわけでもないんだし」

そう続けると「……じゃあ、何でそんな顔してるの」と綱吉が泣きそうな表情をする。ペタペタと自分の顔を触っても、鏡のない病室ではどんな表情をしているのかさえわからない。

「Aが目を覚ましたばかりのときも、さっき復讐者の話をしたときも指先がずっと震えてたのは知ってる」と言われて、思わず自分の手を隠す。

綱吉の変に鋭いところが嫌だ、と図星をつかれて黙っていると、彼は「怒ったり責めたりとか、何もしないからさ」と切なく口を開いた。

「怖かったことを、隠さなくていいんだ」
「……！」

Aの考えてることくらいわかるよ、と握りしめていた両手を纏めてそっと握られる。彼の言葉に動揺して、ここまで互いの距離が縮まっていることに気付けなかった。

あの日、血塗れの家光さんに動揺していた私の視界に映ったのはミイラのような恐ろしい存在。それは白蘭とは比べ物にならない圧倒的な闇で、動けなくなるほどの恐怖を感じた瞬間、体に鋭い衝撃が走り、想像を絶する痛みから意識を飛ばしたことを思い出す。

「先生がさっき、Aがあんなに目を覚まさなかった原因は精神的なものが大きいって言ってた」
「確かに言ってたね」

先ほど診察してくれた先生の話によると、日頃の疲労や寝不足の他に心的要因が大きいのではないかとのことだった。「他に悩んでることとか、俺にできることはない？」と言う彼に、私の悩みの大半が綱吉にあるなど言えるはずもなく「大丈夫だよ」と呟く。

「怖かったのは本当だけど今は平気。さっき、もう襲われることはないって綱吉も言ってたし」
「そうだけど」

彼の罪悪感を消したいと思っても、綱吉の気持ち次第のこの問題は私の言葉だけで解決できない。綱吉のことだ、何かをしないと気が済まないのだろう。そのとき、ふと視線を動かすと窓の外が暗くなっていることに気がつく。

「……じゃあ、もう少しだけ隣にいてほしい」

＿＿これで最後にするから、なんて。
思わせぶりな貴方をなかなか諦められない私の甘さが、最後の言葉を胸の奥に仕舞いこんだ。