154．私はもうひとりで寝られるよ ページ4
「心許してるのが伝わってくるなぁ」
「そうなの？ナッツ」
毛並みを整えるようにして頭を撫でると、ナッツは心地良さそうに目を細めた。「今日誰もいないから、家においでよ」と冗談で笑いかけると、私の言葉を理解しているのか否かGAOと小さく鳴いた気がした。
そんなとき、ドスッバキッと今まで微かに聞こえていた物音が一層激しさを増したような気がして眉をひそめる。家が揺れる感覚に綱吉の部屋の方向を見ると「リ、リボーン」と彼が口を開いた。
「そろそろ一時間経つけど、ずっとこの音鳴り響いてんだけど……」
「やはりダメだったか」
了平さん達のバトルを監視カメラで確認していると言っていたリボーン君は、モニターを見ながら諦めたように呟く。すると、その直後にドォンッという大きな爆発音が聞こえてきた。
「お兄ちゃん！？」
「お兄さん！」
ドタドタと爆発したであろう綱吉の部屋へ向かう彼らに付いていく。扉を開けると、ぐちゃぐちゃになった綱吉の部屋の中心で破壊された問題プレートを片手に笑いあう了平さん達が座り込んでいた。
「何やってるんですか……」呆然と呟く綱吉の声を聞きながら、リボーン君が言った「プレートが破壊されたら出題ミスで解答は不要だ」という発言を真に受けたのかと察する。
「これで勉強勝負は続行不能だな」というリボーン君の言葉を聞いて喜ぶ彼等を見ていると、ふと背後の気配が揺れた気がして振り返る。すると、炎真がその場を立ち去るところだった。
「もう帰るの？炎真」
「うん」
「私ももう帰らなきゃ！じゃあね！」
焦ったような表情を浮かべて沢田家を出ていった京子。そのあとに続くようにゆっくりと家を出た炎真の姿を見て、私も帰ろうとリビングに荷物を取りに戻る。すると「A、待って」と久しぶりに綱吉に名前で呼びかけられた。
「綱吉」
「今日、おばさん出張でいないんだろ？」
「そうだよ」
「……あのさ、久しぶりにAの家に泊まってもいいかな」
予想もしていなかった綱吉の言葉に目を見開く。だけど、これは彼の優しさかと我に返ったときには胸の高鳴りは消えていた。
「急にどうしたの？」
以前は母が出張の度に沢田家に預けられていた。最近になって自然とお泊まりは減り、お惣菜だけいただくことが増えていたのだが、突然の綱吉の提案に動揺が隠せない。
……私のこと避けてたくせに。
「私はもうひとりで寝られるよ」と言うと、綱吉は少し傷付いたような表情を浮かべた。
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
