168．最近様子が変だぞ ページ18
「隼人、ありがと」
「あいつは？」
周囲を軽く警戒しながら歩く姿は不良そのもの。相変わらずの目付きの悪さで周りを威嚇する彼は、先ほど困っている私を助け出してくれた。
お礼の言葉に反応することなく質問してくる彼に「昨日告白してくれた人」と呟くと、隼人は驚き「昨日の今日であれか」と考え込んだように隣に並ぶ。暫くして「はっきり“うぜー”って言えばいいのによ」と呆れたような視線を私に向けた。
「そんなの言えるわけないでしょ」
「だから絡まれんだよ」
「だからってねぇ……」
話題を変えるために「あ、今日はしとぴっちゃんいないんだね」と呟くと、彼はギョッとしたような顔をして「あの女、どこでも出現するから困ったもんだぜ」とため息をつく。
「前は隼人が追いかけてたのに、いつの間にか立場が逆転したね」と笑うと、黙っていた彼に突然顔を覗き込まれる。その瞬間、全く意識していなかった彼との距離があまりにも近いことに気付き軽く後退った。
「な、に」
「やっぱり何かあっただろ」
「……だから、告白されたんだってば」
「最近様子が変だぞ」
何隠してやがる、と睨み付けるような鋭い視線を向けられて思わず息をのんだ。
私が悩むことなんて“綱吉”のことが大半で、きっと彼も私が綱吉のことで何かを隠していると気付いてる。それを理解した上で訊いてくる隼人に「……言わないよ」と口にした。
「あ？」
「……」
「俺は知りたくないことはわざわざ訊かねーからな」
おめーに隠し事をされるほうが
綱吉に“これからもずっと幼馴染でいられるよね”と言われた日も、彼は私の様子が変なことに気付いていた。
昨日の告白現場を綱吉に見られて、漠然とした焦燥感や不安で胸がいっぱいなんて、こんなにも優しい隼人に言えるはずがない。否、言いたくない。
「無理には訊かねぇけどよ、テメーは溜め込んで急に爆発させる癖があんだから少しくらい誰かを頼れ」
＿＿たとえ、それが俺じゃなくても。
言葉のあとに、そう聞こえてきそうな彼の表情に目を見開く。そんな私に「……行くぞ」と言った隼人はゆっくりと前を歩き出した。
「……」
隼人とただ笑いあえてた頃の“友達”に戻れたらいいのに。ずっと感じていたこの感情は『ずっと幼馴染でいられるよね』と言った綱吉の気持ちと、同じものなのかもしれないと思った。
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
