167．勘違いだから ページ17
「ツナ君」
「炎真！おはよう」
Aの告白の返事が気になっていたツナ君に結果を伝えるタイミングを考えていると、偶然前を歩くツナ君を見つけて駆け寄る。暗い表情をしていた彼は、僕の顔を見ると笑顔をつくって笑った。
「昨日のことなんだけど……」と言ってツナ君を見ると、彼の視界の先には昨日の先輩とAがいた。というより、Aに先輩が話しかけているような気がする。
「考え直してくれたかな？」
「すみません、気持ちは変わらなくて」
「ちょっとでも考えてよAちゃん」
十字路の少し先にいる彼女達。少し嫌がっているような気がして「助けにいかなきゃ」と口に出した瞬間、隣にいたツナ君が一足先に走り出そうとする。しかし、角から飛び出してきた彼の姿を見て、その足はすぐに止まってしまった。
「おい、行くぞ」
「……あ、うん」
「お前は……」
「あ？」
十字路から現れたのは獄寺君で、彼は先輩から守るようにしてAを自分の方に抱き寄せる。彼に睨みをきかせられた先輩は、怯えたような態度で逃げ出してしまった。
僕達が少し後ろに立っているのも気付かずにA達はゆっくりと歩きだす。二人の距離の近さに軽く動揺が隠せないまま黙っていると、隣にいたツナ君の様子が気になり隣を向く。彼は、泣きそうでどこか諦めたような表情を浮かべていた。
「……やっぱり」
「え？」
「い、いや、美男美女だなって」
2人とも美形だから、と苦笑いする彼に僕はどう声をかけるのが正しいのだろう。一瞬言葉につまるが「昨日のことなんだけど」と無理やり口を開いてAに言われたことを話題に出す。
「あのあとA、告白断ったって言ってたよ」
「……そうなの？」
複雑な表情のツナ君の様子が気になり、黙って見つめていると「炎真は、Aと恋愛の話とかするんだね」と言われた。「……ううん、普段はしないよ。昨日たまたま会ったときに訊いてみただけ」と言うと、彼は「そうなんだね」と笑ってゆっくり歩き出した。
「ツナ君、Aからの告白どうして断ったの？」
「……あれはAの勘違いだから」
痛む胸に気付かないふりをして質問すると、ツナ君は驚いたような顔をしてぼそっと呟く。A本人に聞いた彼女の想いを、真っ直ぐに否定するツナ君の言葉の意味がわからなくて問い返すと、彼は前を歩く彼等を眺めながら小さく笑った。
「Aが俺に向けた気持ちは恋愛じゃないよ」
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
