163．ずっと好きだったんだ ページ13
「俺、知らなかったんだけどAって入学当初から密かに人気があったんだって」
Aは何も言わないから、と呟いたツナ君は「京子ちゃんとよく一緒にいるから、皆が見てるのは京子ちゃんのことだと思ってた」と自嘲気味に笑う。
少し元気がないように思えてどう声をかけようかと考えていると、彼は小さな声でぼそっと呟いた。
「A、あの告白の返事どうしたのかな」
「……気になる？」
「そりゃ、幼馴染なんだし気になるよ」
はぁぁ、とわかりやすくため息をついたツナ君が、気まずい空気に耐えられないとばかりに飲み物を口に含む。それも気にせず「……ツナ君はAのこと好きなの？」と質問すると、彼は勢いよく口の中身を吹き出した。
「っな、なんで？」
「いつも見てるじゃん」
「み、見てないよ！」
「そうかな」
咳き込んで涙目になっているツナ君は、動揺が隠せていない。
最近やけに目につくAの姿。そんな彼女の視線の先にはよくツナ君がいて、Aの視線が外れたときにツナ君が彼女のことを見る。そんな2人の様子から、普通の幼馴染はこんな感じなのかと疑問に思ったのは記憶に新しい。
「じゃあ、どう思ってるの？」
「皆Aのこと訊いてくるけど、本当に俺達はただの幼馴染だよ」
「……」
「生まれたときから一緒にいる大切な存在なんだ。家族みたいなものだし、1番信用できる親友だとも思ってる」
歩くスピードが遅くなったツナ君に合わせて話をきいていると、彼は見たこともないくらい優しい表情を浮かべていて、少し嫌な予感がした。
「……Aと仲いいんだね」
「まぁ、俺の母さんに似てAは世話好きだから昔から俺の面倒みてくれてて」
「……へぇ」
「俺がAのお父さんの代わりになるって思えるくらい誰よりも大切だし、好きだと思う」
“好き”というツナ君の言葉に反応して立ち止まる。「それって……」と目を合わせると彼は軽く目を伏せ、照れたように頬を掻きながら小さく笑った。
「誰にも言ったことないんだけど、Aのことずっと好きだったんだ」
受け入れる準備をしていなかった衝撃的な台詞に一瞬頭が真っ白になる。何故か張り裂けそうなくらい胸が苦しい。目を見開いた僕の様子にも気付かずに、俯いたままツナ君は「ずっと一緒にいるのが当たり前で、これからもそうだと思ってた」と続ける。
「……でも、あるとき気付いたんだ。俺達は、
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
