【REBORN】最高の幸せ 3【沢田綱吉】 (ページ9)

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109．急いで追って！ページ9

翌日、ボイコットを一時休戦にした私達は朝食の用意をしようとキッチンに向かう。すると、京子がビアンキさんに何か耳打ちされていた。何を話してたのかな、なんて特に疑問を感じることなく何気無しに彼女に視線を向ける。

京子は「私、1人で買い物に行ってくるね」とニコニコ笑いながら買い物かごを手に取っていた。「危なくないのかな……私も付いていこうか？」そう声をかけると京子は、ビアンキさんが“一人で外に出ても大丈夫”だと教えてくれたから一人で行けると口に出す。

気分転換も必要だろうから、と無理に引き留めずに「いってらっしゃい」と声をかける。そうして暫くの間、ハルちゃんと2人で朝食の用意をしていたが、ふと京子がお財布を忘れて行ったことに気がついた。

「……京子、お財布忘れてる」
「知らせてあげないと！」
「まだ遠くまで行ってないと思うし、届けてくるね！」

慌てて外へ出ようとすると、ビアンキさんの大声が聞こえてピタッと立ち止まる。どうやら出口付近で誰かと話をしているらしい。こんなに深刻な声を出す彼女は初めて見るかもしれない、なんて考えながら耳を澄ませたのが間違いだった。

「京子がアジトを飛び出したの！何も教えてくれないこんな所にいられないって！」
「何だって！？」
「今なら間に合うわ！急いで追って！」

聞こえた会話に思わず目を見開く。言葉にできない苦しみが何度もズキズキと胸元を突き刺した。昨夜から感じていた頭痛や倦怠感が相まって、私を絶望の底へと追いやる。

……ビアンキさん、どうして綱吉に嘘をついたの。震える拳の中に残る彼女のお財布が密かに存在感を主張した。これは届けに行くべきなのかな。「ジャンニーニ、ハッチを開けてくれ！」と耳元のインカムに叫びながら外へと駆けていく綱吉の後ろ姿。

「ツナを騙してどーする気だ？」
「修業に行き詰まってたみたいだからリフレッシュよ」
「……悪くねーな」

胸が張り裂けそうな光景に立ち尽くすことしかできない。リボーン君とビアンキさんとの会話も上手く聞き取れないくらいの動揺で俯いていると「A」と突然下の方から声をかけられた。

「……リ、リボーン君、どうしたの？」
「ツナは京子を追いかけたぞ」
「……っ！」

どうやらビアンキさんは既にこの場から去ったようで、彼はわざわざ物陰に隠れていた私の所まで声を掛けに来たらしい。リボーン君は私の恋心を知っている。その上で現実を突きつけてきた。