123．んだとテメー ページ23
「てめっおせーぞ回復すんの！」
「……隼人の声、頭に響く」
「んだとテメー」
ズカズカとポケットに両手をいれたまま近づいてきた隼人の大声は、病み上がりの頭に響く。冗談っぽくこめかみを押さえると「治ったんなら言えっつったろーが」と軽く小突かれた。
「皆に聞いたよ。心配してくれてたんでしょ？ありがと」
「俺は別に」
ビアンキさんや京子達から隼人が一番心配してくれていたことを聞いていた。そんな私達の会話にニコニコと笑顔を浮かべる京子達を視界の端に「……あれ、隼人ひとりなの？」と彼を見上げる。扉を開けてキッチンに入ってきたのは隼人だけだった。
「あぁ」
「皆さんの修業が仕上げ段階に入ってから、全員で食事することが無くなったんです」
「やっぱり今日も揃わなかったね……」
「はい、無理していないといいんですが」
そう言って心配そうに眉を下げる彼女達。そんな京子の頭に浮かんでいるのが綱吉だと気づかないふりをして「隼人食べるでしょ、ご飯温めよっか」と立ち上がった。
「今日の夜ご飯、何が食べたい？」
リクエストあったら作るよ、と笑いかけると後ろを付いてきていた隼人が「食えりゃ何でもいい」と呟く。そんな彼の言葉に「あのね、作る方の気持ちも考えてよ」と呆れた視線を向けた。
フライパンの中身を覗き込む彼を見て「隼人と結婚した奥さんの苦労が目に浮かぶなぁ」と思わず笑ってしまう。するとじっと私の顔を見つめる彼は「Aが作んなら何でもいーぜ」と鼻で笑った。
「……なにそれ」
頼む態度じゃないでしょ、なんて考えながらもそれを嬉しく思っている自分もいて複雑な気持ちになる。
その日は、結局夜になっても皆が揃うことはなかったと聞いた。綱吉に鉢合わせするのが怖くて、私は部屋に引きこもっていたけれど。
チョイス当日である翌日。その日は朝からバタバタと騒がしかった。「Aはこれね」とビアンキさんに渡されたスーツのような、でもどこか制服にも似た衣装を手に持ったまま、隣にいた京子に視線を向けた。
「これ、かわいいね」
「私達は赤のジャケットなんだね」
「そうだね！あ、でもネクタイは黒だよ」
「おしゃれだね」
スーツはボンゴレの正装らしく、守護者達は黒のスーツを身に纏うらしい。皆スーツ似合うんだろうな、なんて考えながらスカートのプリーツを整える。そうして私達は、高鳴る胸を押さえて皆の場所へと向かった。
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作者名：√A | 作成日時：2022年8月22日 13時
