106．もうキスは済ませた？ ページ6
クロームちゃんの傷跡をみて息を飲んだ京子達。心配する彼女達に「ボス達に比べれば、ずっとましだと思う」と告げて去っていく。そんな彼女に、私は自分の意思もなく京子達に言われるがままボイコットを続けていたことに胸が張り裂けそうになった。
「……私」
「男のプライドなんてハルにはナンセンスで全然ついていけませんけど」
「一時休戦にしよっか！」
綱吉達のご飯だけでも作っていいかな、と口に出そうとするとハルちゃんや京子が優しい表情をして笑った。ボイコット生活をやめてくれるんだ、と考えていると近くにいたビアンキさんが嫌な笑みを浮かべて近づいてくる。
「そういえば隼人とはどうなの？もうキスは済ませた？」
「……え？」
「それくらいの頃から好きだったんでしょ？本人から聞いたんだもの、隠さなくていいわよ」
姉弟のことは余計に気になるのか、ビアンキさんは口角をあげた。未来の私から隼人のことを聞いたという彼女は、逆上せて赤くなった顔を照れていると勘違いしたのか「照れてるのね」あの子にはもったいない、と続ける。
「まぁ、でもAなら安心だわ」
動揺が隠せず口を開くことさえできない。2人に……京子に隼人と未来で付き合っていたことが知られちゃう。そんな焦りが伝わるはずもなく「ビアンキさん！Aやっぱり獄寺君と何かあったんですか？」と京子が反応した。
「やっぱりってことは……へぇ」
「Aの前に言ってた好きな人って、やっぱり獄寺君だったんだぁ」
「げ！Aちゃんあの人が好きなんですか！」
声の響く密室で女子トークを弾ませる彼女達。京子に知られた絶望で上手く声が出せないまま俯く。そんな中「この子、未来でも秘密主義でね。気持ちを隠すのが得意だから、唯一何を考えているのか私にもよくわからなくて心配だったの……」とビアンキさんは優しく笑った。
「未来のあなた達も上手くやってたのよ。隼人なんかAが行方不明に……」
「あの！」
「！？」
話を遮るように大きな声を出す。驚いたように目を見開く彼女達を視界に入れないように立ち上がり「逆上せちゃったからお先に失礼しますね」と明るく振る舞い笑いかけた。
「……ごめんA、からかわれるの苦手だったよね」
「そうなの？未来のあなたと同じように関わってしまったわ。ごめんなさい」
「大丈夫ですよ！」
その場から逃げ出すことしか考えていなかった私は、彼との関係を否定することまで頭が回らなかった。
107．気持ちも知らねーで→←105．気になる相手ならなおさらね
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：√A | 作成日時：2022年8月22日 13時
