終章 アズカバンの囚人 ページ10
ボクとトムはすべての荷物をまとめた。クリーチャーが手伝ってくれたので、思いのほかすぐに終わった。
そして、その荷物をすべて新居に魔法で送り、ボクらは最後にヴァルブルガ様に挨拶を詩に向かった。
「本当に行くのね」
「はい、ヴァルブルガ様。今まで本当にお世話になりました」
ボクは頭を下げた。それに続いてトムも軽く頭を下げる。
「エイブリーがあなたをブラックに預けたのよ。ずっとここにいてもいいの」
「いえ、そんなに迷惑をかけるわけにはいかないんです。それに、ボクはやりたいことがいくつかあるので」
「あら、何をしたいのかしら？」
ボクは一枚の書類を見せた。
「お父さんに会いに行きます」
「……エイブリーに？」
ヴァルブルガ様は目を見開いた。
「ボクが独り立ちするまで、お父さんは徹底的にボクとの接触が禁じられていました。養育費も食費も払うことができなかったんです。
けど、ボクがここでブラック家の扶養から抜け出せて、もうすでに独り立ちできるようであれば、裁判での決定は破棄される……。
これはボクとお父さんを引き離した裁判で決まったことなんです」
ヴァルブルガ様はほほ笑んだ。
「いいわよ。あなたがそれで幸せになれるのなら。トム、Aを頼んだわよ」
「わかってるさヴァルブルガ。僕とはほとんど血のつながりのないはずだけど、家族だからね」
「つながってると思うけど」
「僕もAも父親の血をほとんど受け継いだようなものだろう。二人そろってゴーントの血は、パーセルマウスと目にしか表れていない」
「まあ、それもそうだよね」
実質家族じゃなくて友達だし。
「本当にさよならなのね。私はいつでもここで待っているわ。ブラック家で、クリーチャーと一緒に」
「うん、一か月に一回は会いに行きたい」
「僕らが困ったら、ぜひ助けてくれ」
ボクらはヴァルブルガ様と別れて、クリーチャーのいる玄関へと向かった。
「A様は、いつまでたってもクリーチャーめの主人でございます。いつでも会いに来てください」
「そんな関係じゃなくても、ボクらもう会いに行ける関係だよ！だって、昔からの友達じゃん！」
「クリーチャーめの、友達……！」
「うん、だから、いつでも会いに行くし、会いたかったら会いに来てね！」
それじゃあ、とボクらは姿現しでブラック家を去った。
さようなら、ボクが育った家。
そして、目の前にそびえたつ巨大な屋敷の前に立った。
「こんにちは、ゴーント家」
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