人生万事塞翁が虎…其ノ捌 ページ10
「おい太宰!上条!」
暫くして別行動だった国木田が駆け寄ったのを見つけた太宰が、「虎は捕まえたよ」とまだ伸びている敦を指差す。
「っ!…本当にその小僧が?」
「うん、虎の能力者だ。変身してる間の記憶が無かったんだね」
「全く……次から事前に説明しろ」
“十五番街の西倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ”
そう言いながら不満そうに、太宰から茶屋で渡されたメモをペラペラさせた。
「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
国木田が目を向けた先には、人影が三つ。
「なンだ、怪我人はなしかい?つまんないねェ」
――与謝野晶子『君死給勿』
「はっはっは!太宰も斎も、中々できるようになったじゃないか。まあ僕には及ばないけどね!」
――江戸川乱歩『超推理』
「でもそのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
――宮沢賢治『雨ニモマケズ』
「どうする太宰?一応、区の災害指定猛獣だぞ」
――国木田独歩『独歩吟客』
「うふふ、実はもう決めてある」
――太宰治『人間失格』
『太宰ぃ…もう帰って寝たい…』
――上条斎『春の嵐』
太宰は腕に絡みつく上条を撫でてやりながら、まだ目を覚まさぬ敦を見つめる。
思い出すのは敦の言葉だった。
“こんな奴がどこで野垂れ死んだって…いや、いっそ食われて死んだ方が……”
太宰は社員に向き直り、笑顔でこう告げた。
「うちの社員にする」
一同、呆然とした顔になったと思うと、
「はああああっ!?」
皆の心を代表した、国木田の叫びだけが夜の倉庫に響き渡った。
――中島敦『月下獣』
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桐宮 - こういう主人公大好きだねぇ。可愛い…。 (2017年1月4日 20時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - ( ゚д゚)ハッ! ご指摘ありがとうございます。頑張りますね (2016年11月28日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
お人形 - 羅生門ですよ。 面白いです。更新頑張ってください。 (2016年11月28日 18時) (レス) id: 880e38e28c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 夏柴さん» 感想ありがとうございます!ご指摘の点は、後で公開する異能力の情報で納得していただけるかと…。これからも楽しんで頂けたら嬉しいです (2016年11月27日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
夏柴(プロフ) - 面白いです!…………余計かもしれませんが脳細胞は再生できなくてしても記憶が無くなってるそうです。すいません…………変なこと書いて (2016年11月27日 17時) (レス) id: f84fce7cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2016年11月19日 19時