ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス…其ノ玖 ページ23
立ち竦む敦の眼前で繰り広げられるのは、舞だった。
生き物を冒涜するほど、死が軽薄にぶつかり合う。
不死者と黒獣が踊り狂う、――死に至る舞。
ビルの壁、あわや黒獣そのものを踏み台に、上条は攻撃を避ける。
敢えて自身に掠るように、喰われるように。
時折、芥川や樋口を喰らおうとするも、それを避けられるのさえ想定内で。
黒獣に手当り次第に襲わせようとも、樋口を巻き込む訳にもいかず、けれど上条には勝手に楽しまれ、苛立ちを隠せずにいた。
『アハハ、…まだまだ、こんなモンじゃないだろ?もっと楽しませろよ!』
彼の再生能力は際限を知らない。
体の何処が引き千切られようとも、痛みをまるで感じていないように狂気の笑みを浮かべていた。
対して黒獣を操る芥川は、精神力をそれなりに浪費する。そして体の弱さが、時期にそれに耐えられなくなるだろう。
故に、勝敗は決まったようなものであった。
――だが。
『ッあ゙…?』
上条の真横から発砲音。当然のように飛び出る弾丸が、彼の頭をぶち抜いた。
「……っ」
発砲したのは樋口。この攻撃に意味が無いのは判っている。あとで本当に、自分が喰われるかもしれない。
恐怖に冷や汗をかきながらも、しっかりと拳銃を握りしめていた。
上条の意識が、一瞬ブラックアウトする。
だがすぐに、脳細胞が再構築され視界がぼんやりと戻った。
今自分は、ビルの壁から重力に従い、コンクリートに落ちている。
敦と目が合った。
自分に対する恐怖に染まった瞳。
最も苦手な、その感情に。
思わず呆然としてしまった。
『がっ……』
その瞬間を見逃す訳もなく、芥川は黒獣で上条の腹と両手足を貫き、そのままビルの壁へと強固に縫いつけた。
敦が助けに行こうと足を動かすが、樋口に銃口を向けられ阻止される。
ゴホゴホッと、芥川は小さく咳き込んだ。
「これならば再生できまい。…上条さん、貴方の負けだ」
芥川の言う通りだった。
上条は拘束を抜け出すことはできない。
貫通した箇所も勝手に再生しようとするが、そのそばから喰われていくため無意味。
抵抗の術は、無い。
そして何より、彼自身からもう戦意が伺えなかった。
その有り様を見て、敦は尻餅をついた。
荒事を対処すると言った上条も、誰も、もう立てない。
自分はここで、彼らに殺されるのだろうか。
――万一の時は頼むぞ。
その言葉を思い出した。
そして自分が、何をすべきか。
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桐宮 - こういう主人公大好きだねぇ。可愛い…。 (2017年1月4日 20時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - ( ゚д゚)ハッ! ご指摘ありがとうございます。頑張りますね (2016年11月28日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
お人形 - 羅生門ですよ。 面白いです。更新頑張ってください。 (2016年11月28日 18時) (レス) id: 880e38e28c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 夏柴さん» 感想ありがとうございます!ご指摘の点は、後で公開する異能力の情報で納得していただけるかと…。これからも楽しんで頂けたら嬉しいです (2016年11月27日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
夏柴(プロフ) - 面白いです!…………余計かもしれませんが脳細胞は再生できなくてしても記憶が無くなってるそうです。すいません…………変なこと書いて (2016年11月27日 17時) (レス) id: f84fce7cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2016年11月19日 19時