ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス…其ノ伍 ページ19
「はぁ…」
カメラを鞄に仕舞いながら、敦は小さいため息をついた。
簡単な仕事、とは言われるものの、初仕事であるのだから緊張するに決まっている。
「小僧、谷崎たちが一緒だから大丈夫かと思うが……、万一の時は頼むぞ」
「万一の時って…、そんな無茶な!」
「あくまで可能性だ。そう心配することはない、もし荒事になれば上条が対処するだろう」
「そういえば上条さん、いつもよりも静かというかなんというか…」
「外に出向く仕事の前は、大体ああだから気にせんでいい。最近仕事が無かったせいか、余計に不気味だかな」
困ったような国木田が目を向けた先、太宰に抱かれた上条は普段の幸せそうな顔ではない。
寧ろ、何処か戦場に出向くような、真剣な顔。
『太宰、そろそろ』
「まーだ。――今日は“食べちゃ駄目”だからね?」
『…分かってる。証拠集めだけなんだし』
「ならよし!」
“食べる”、とはどういう意味なのだろう。
それを言った太宰の目は少し悲しげで、上条も同じ。
敦にはそこが、誰にも踏み込むことのできない領域であるように見えた。
実際そうなのであろう。誰も二人に深くは関わらない。同時に、二人もあまり周りと深い関係を築かない。
そんな不自然さが、この場にはあった。
「不運かつ不幸なお前の人生に、些かの同情が無いわけでもない。故に、この街で生きるコツを一つだけ教えてやる」
国木田は手帳から一枚の写真を取り出すと、敦へと差し出した。
「此奴には会うな。会ったら逃げろ」
その写真に写っていたのは、黒の外套を纏う男だった。自分と少ししか年の離れていなそうな、顔色の悪い男だった。
「この人は?」
『マフィアだ』
「マフィア…」
「そう、それ以外に呼び方が無いからから、そう呼んでいるだけなんだけど」
そう言いながら、割り込んでくるのは太宰と上条。
さっきまでの重い雰囲気は一欠片も無く、いつも通りである。
「港を縄張りとする凶暴な犯罪組織、奴らはポートマフィアと呼ばれている」
国木田曰く、この街の裏社会で最も危険な集団であり、中でもこの男は殺戮に特化した異能力を持っている、と。
「…この男の名は?」
「芥川龍之介だ」
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桐宮 - こういう主人公大好きだねぇ。可愛い…。 (2017年1月4日 20時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - ( ゚д゚)ハッ! ご指摘ありがとうございます。頑張りますね (2016年11月28日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
お人形 - 羅生門ですよ。 面白いです。更新頑張ってください。 (2016年11月28日 18時) (レス) id: 880e38e28c (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 夏柴さん» 感想ありがとうございます!ご指摘の点は、後で公開する異能力の情報で納得していただけるかと…。これからも楽しんで頂けたら嬉しいです (2016年11月27日 18時) (レス) id: f3c5c75437 (このIDを非表示/違反報告)
夏柴(プロフ) - 面白いです!…………余計かもしれませんが脳細胞は再生できなくてしても記憶が無くなってるそうです。すいません…………変なこと書いて (2016年11月27日 17時) (レス) id: f84fce7cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2016年11月19日 19時