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【今日は何する?】
【かくれんぼしよ!】
そんな声が聞こえてきた。広がる草原で、2人の少年が走り、遊んでいるようだ。一方は白いパンダのパーカーを着ていて、もう一方は青いジャージ。
…あっ、パンダの子転けちゃった。
もう1人の子が心配しているものの大丈夫だよ!と元気いっぱいに言い返している。
あれ、これって、
子供時代の俺?
そしてもう一度声がする方を見れば、子供の俺と話しているのはきんときだった。
…懐かしいなぁ
【じゃあnakamu鬼ね】
【分かった!】
子供の時の俺は叫ぶ。きんときは小さく笑った後、木が生い茂る森へと消えていく。追いかけようかと思ったが、森へは何かで塞がれていて俺は入れなかった。
今頃、自分の身体を見返す。
すると手は半透明になっていて、この記憶の中の何かに触ることや呼びかけることは出来ないようだった。
【1……2……3……4……
5……6……7……8……9……10】
そう思っているうち、子供の俺は数え終わったのか森に向かい大きな声で叫ぶ。
【きんとき行くよー!】
そうだ、この後…
きんときと俺は同じA国の孤児院出身だった。
あのアサルトライフルもこの孤児院を出る時に貰った物だった。
いつの間にか日は落ち、一緒にかくれんぼをしていたはずのきんときは見つけられない内に居なくなっていた。あの優しくてお兄ちゃん気質のきんときが…。
俺はあの時とは違う、何かが可笑しいと感じていた。
【………きんときは?】
【……きんときはもういないのよ】
孤児院の母にそう告げられ俺は衝撃、悲しみが混じり泣きじゃくる。
子供の俺は走って孤児院の玄関扉を開け外に出ると、森に向かって走っていく。
森の手前まで追いかけていくと、また昼のように彼は転けてしまった。
【………なんでだよっ、】
【…………戻ろうか】
母から手を差し伸べられ、子供の俺はその手を掴むことしか出来なかった。もう、あの背中と笑顔は見れないのかな。なんて考えたかな。
なんで言ってくれなかったの?
会えるのがこんな最期じゃ悔しすぎるよ
ここにいないきんときにそう言っても届くはずが無いのに。
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作者名:単柴 | 作成日時:2020年6月27日 18時