#5 ページ5
「外出理由はなんでしょう〜？」
俺の目の前にいる赤茶色の髪をした兵士は、俺を観察しながらそう言う。ちゃんと、ベルトにつけているナイフは隠している。ボディーチェックだって難なく乗り越えた。
「買い物に行きます。僕の父が困っているもので…」
自慢の演技でそう兵士に告げる。
「あぁ、そうだったのね。どうぞお通りください」
ここは国境の基地で、通らなければ違う国に行く事は出来ない。国境には必ず兵士がいるのだが、簡潔に『誰かを殺しに行くためです』とは言える訳がないのでいつも嘘をついている。
俺が今いる国はA国、W国に向かうためにはどうしても通る。
A国は世界的なカーストで平均より下として見られている国だし、いい理由をつけないと通れないが俺は何故か止められた事はなかった。
…名前は知られているはずなのに。
仕事に支障が出ない事を吉と思うのか、あまりに疑わず通っていた事を凶と思うのか。
馬鹿な俺には…分からなかった。
なんて、考えていれば重そうな鉄の扉が開く。目の前にいた兵士は八重歯のある口角を上げ、にこにこしながらどうぞ！なんて言ってくる。A国に勤める人で俺が住む街以外に笑った人なんて見た事なかった。
なんだか、背筋が冷える。
「ありがとうございます。」
そうお礼を言い、扉の先に足を掛け未見のW国に一歩踏み出す。
扉から少し歩いた所で俺は呟く。
「もし、俺が外交官殺そうとしてるって知ったら止めなきゃいけないよね、」
ふふ、と口から笑みが溢れる。
「残念でしたね。赤茶色の兵士、さん。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：単柴 | 作成日時：2020年6月27日 18時
